ホワイトホースへ帰ろう!
引き寄せられるように到着したツクトヤクツクは、人口1,000人の小さな町。住民の殆どがイヌイットで、大規模な油田開発や東西冷戦のレーダー基地などで発展した町だ。
この時期、11時過ぎに明るくなり15時には暗くなる、太陽は全く顔を出さない。薄暗い町を走りながら、宿泊施設を探すがなかなか見つけられない。観光客が来ない冬期は閉まっているのだが、頼み込んでB&B(家族経営などの小規模な宿泊施設)を開けてもらい、どうにか一夜の宿を手に入れることができた。帰国便は8日後、日程にはまだまだ余裕がある。
夜、オーロラは厚い雲に阻まれ現れず、風が強くなり何度も目が覚める。窓の外は地吹雪で真っ白、嫌な予感が徐々に高まっていく。朝を迎えても状況は変わらず、アイスロードが通行止めになっていることを知らされる。
「帰れない」
この日は大晦日。夕方には天候が回復し、新年を迎えると銃やクラクションなど音が出る物が一斉に鳴り始め、スノーモービルが町中を走り回る。新年を迎える光景は、どの国も同じようなものだ。
暫くすると待ちに待ったオーロラが現れ、小高い丘に登り極北のオーロラを堪能。しかし、数時間後にはまたブリザードで真っ白な世界に逆戻りした。
元旦は、一日中ブリザードが吹き荒れ部屋の中に缶詰。翌朝も天候は変わらず、「帰国便に間に合わないのでは・・・」と焦りが募る。こんな気持ちを察してか、隣の住人が昼食に招待してくれ、ベルーガやカリブーなどのイヌイット料理を頂いた。
午後遅くブリザードが去り、夜空いっぱいにダイナミックなオーロラが現れた。しかし直ぐにアイスロード開通とはならない。まず町の除雪作業を優先、数台の除雪車は朝からフル稼動している。町の中を歩いていると「明日の朝にはアイスロードが開通するから心配するな」と人々が声を掛けてくれる。
ツクトヤクツク最後の晩、またしても素晴らしいオーロラが現れた。町の最北まで移動して撮影を始めるが、冷たい風が雪を巻き上げ極北の寒さが襲いかかってくる。撮影を終えて引きあげる時、アイスロード周辺では幾つもの光が行き来している。夜を徹して除雪作業が行われている。
残り時間は3日間、ここまでは時間を掛け小刻みに来たが、帰りは制限時間付きで一気にホワイトホースへ、1400kmのロングドライブだ。
翌朝、オープンと同時に一番乗りでアイスロードに入り、除雪作業中の中を進む。特に吹きだまりには注意が必要で、不用意に突っ込むとスタックして動けなくなってしまう。それでも緊張感は往路には及ばない。知っているということの安心感が心強い。
イヌビックで給油、デンプスターハイウェイで峠を越えユーコンに戻り、日が変わる頃イーグルプレインズに到着し一安心。
夕食の準備をしていると、かすかな光が立ち上っている。
「オーロラが来る」
静かで優しいオーロラが、夜空に大きな橋をつくる。ふかふかの雪の中に腰を下ろし、オーロラを見あげる。吹きさらしにいるより、雪に埋もれている方が暖かい。
結局、寒さに耐えきれず撮影を切り上げた、仮眠の準備を続ける間もウインドウの外にはオーロラがゆらゆらと揺らめいている。
朝、サイドミラーに映った真っ赤な朝焼けで目が覚めた。久しぶりに見る輝きに、気力が漲ってくる。給油を済ませ、また走り始める。残り850km、焦らず慎重な運転を心掛ける。
目一杯走り、疲れたら仮眠を繰り返し、翌朝には無事にホワイトホースに帰着。どうにか帰国便には間に合った。
ある程度の悪天候は計算していたが、最後の一週間は天気予報と睨めっこで大いに緊張感を味わった。
極北カナダの厳しさとそこで生きる人々の暖かさ、美しいオーロラ、野生のカリブーと価値ある貴重な旅になった。少々無謀なドライブではあったが、変わりゆく地球の色を自分の目に焼き付けることができた。
■オーロラ撮影ツアー(申し込み終了)
極北のカナダ・ユーコンオーロラ撮影会 6日間 (オリンパス・郵船トラベル共同企画)
期間:2010年2月17日(水)〜2月22日(月)
上記ツアーのお申し込み受付は終了となりました。
お申し込みありがとうございました。
■関連サイト
カナダ観光局 公式ホームページ