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2007年05月31日

雨の日に。

テーマ: かく語りき

憲法九条も含めた平和講演会で大阪へ。ステージで歌を披露された野田淳子さんと。娘さんご夫婦はぼくの映画のファンだとかで記念撮影!

 きのうは一日だけ雨が降って、今朝はもう太陽がきらきら光っている。  きのうは一日、雨が不思議だった。思わず表に出て、雨の雫を掌に受け止めてみたりした。あ、水だ。冷たいぞ。掌が濡れたぞ!
 これって、不思議ですよね。ぼくが今こどもだったら、そう思ったはずです。
 だって、この頃、雨が降らない。雨が降らないのが、普通になっている。日本全国あちこちで、ダムの底が干涸びだしているそうです。今二つか三つの子だったら、雨は珍しい。見た記憶はあまりない。そこにいきなり空から水の雫が落ちて来たら、そりゃ不思議ですよね。きのうのぼくも、そんな気持でした。
 すると色んなことを考えます。

 ──ゴッホは、雨の絵を描いたっけ?……
 黄色い糸杉や麦畑。鴉に自画像、跳ね上る懸橋。でも、雨の記憶はありません。
 さっそく尾道の伝ちゃんにメールを打つ。新聞記者さんなら、何か情報を持っているだろう。

 ──尾道の美術館の学芸員に聞くと、日本の浮世絵を題材にした作品があると言います。調べてもらってます。
 ほほう。ゴッホは日本の雨を描いたか!

事務所のフィルム編集室の隣には、ちゃんとデジタル機器もありますよ。編集の天才・三本木久城君と。

 けど、画家が画布に雨を描くって、大変な作業ではないか? どう大変かはぼくは画家ではないから分からないけど。だって、キャンパス、濡れやしない? 雨に色があるのかなあ? 雨が降ると線になるのかしら? 雨を描いているゴッホさんは濡れないのかしら? 絵も、雨と同じくらい不思議です! ぼくがこどもならそう思う。大人は何でも当たり前で、だんだん不思議なことが少なくなるなあ。それは、つまんない。

演出家中村明君も来社。恭子さんはずき嬢も顔を揃えて、編集一休みのティータイム。

 あ、映画では、雨は黒いぞ。黒澤明監督は《羅生門》という映画の撮影をする時、雨が透明で画面に映らないので、雨に墨汁を混ぜて黒い雨を降らせたんだそうだ! 黒澤さんもスタッフも真黒になって、やっぱりびしょ濡れに濡れちゃったんじゃないか? 聞いた話だから分からないけど。白い鳩も鴉になったかな!?
 ──画面の中に風を吹かせて埃を巻き上げ、大雨など降らすとね、映画に力が出るんだ、とは実際に黒澤さんが話されるのを聞いた。
 うん! 黒澤さんの映画にはそういう場面が多いな。黒澤さんはゴッホも映画に登場させたけど、雨は降らなかったな。風も吹いていなかった。静謐で、色彩に溢れていて、明る過ぎて一寸怖かった。浮世絵の雨? なるほど浮世絵に雨は多いな。日本の四季ですね。穏やかだ。ゴッホはどんな気持で、日本の雨と向き合っていたのだろう?

事務所では昼間は取材が色いろ。ぼくはグラビアの被写体を務める。映画公開を控えると何かと被写体となる仕事が多い。

メイクの千江子さんが立ち寄って、お昼。人の出入りも賑やか。

 ゴッホの生涯を舞台で描かないか、という話がある。ああ“ゴーギャンのともだち”か! とぼくは思う。“オレキエッテ”はさてどうだ! 戯れに、その舞台の題名を思っているのである。そんな“戯れ”から物語を手繰り寄せていくのは、ぼくの癖であるらしい。“オレキエッテ”と正確に発音したかどうか、これは“ゴッホの耳たぶ”の意だと聞いた。今はその名も流布しているのかも知れないが、ぼくがそれを聞いたのはローマ市中に1400年代からある石造りの建物の中にある古いレストランで出されたパスタの名だった。これがとびきり、うまかった! フェリーニのお気に入りの店でヴィスコンティの助監督さんが案内してくれた。イタリア貴族ばかりが集る店で一見の客は入れないのだとか。ぼくはその時ソフィア・ローレンのCMを撮っていた。“ラッタッタ”という、あれです。で、“ゴッホの耳たぶ”の話ですが、説明は要らないよね! ゴッホ自身が削ぎ落とした耳たぶをパスタに茹でて食するというんだから、流石イタリア、流石貴族、流石ゴッホ、流石芸術! さすが、を流石と書くのは、サスガ日本!

 ──歌川広重の名所江戸百景を手本に「雨の大橋(1887)」など数点あるようです、と伝ちゃんからの返信。
 画家が絵を手本に絵を描くとはどういうことだろう? その時ゴッホの心は雨に濡れていたんだろうか? ゴッホの人生にとって、雨って何だったんだろう?

 ぼくは、雨の日でも撮影します。天候でスケジュールは変えない、が原則。人生いつだって雨は降る。映画の中だって! 運動会なんて雨の中の方がドラマチックな画面になるよ。濡れるというだけで、新しいストーリーが生まれます。キャメラもライトもメイクも音響もみんな濡れて大変だけど、お客様は映画館の中で濡れてないもんなあ。お客様のために我慢する、これも原則!

千茱萸さんが編集中の《転校生ーさよならあなた》のパンフレットの表紙デザインが色いろ。

主演の蓮佛美沙子くんのモデル写真つき!読みもの満載の楽しいパンフが出来そう。

この間、筧利夫くんの舞台を見に行った。若々しくダンスを踊ってみせる。口跡が美しい。鍛え抜かれてキレの良い座長芝居。でも野球の選手ならそろそろ引退の年齢だぞ。楽屋を訪ねると疲れた様子は一切無く「《22才の別れ》の九州上映の旅、お疲れ様でした」、と明るくこちらを労ってくれる。その顔がゴッホのように見えた。《22才の別れ》ではハンフリー・ボガードだったけど。楽屋を出る所でこの舞台に筧くんの“恋人”役で出ている黒木メイサくんを見掛ける。十八歳! 素晴らしい“舞台女優”さんの登場! ぼくは身も心も奪われましたよ。恭子さんとにこにこと渋谷で食事をしている所へ娘の千茱萸さんが。事務所のはずき嬢も合流してライブハウスへ。《転校生》に主題歌を提供して下さった寺尾沙穂さんのピアノの弾き語り。その主題歌『さよならの歌』の名唱! 心はしっとり!
 帰りがけに三軒茶屋の馴染みのお店で皆で食事していると勝野洋くんが。色色な人と会えて語らって、今日も生きていることが愉しい。

 テレヴィの画面の中で松坂投手のレッドソックス軍が試合開始を待っている。おや、アメリカは今、雨です! 観客席は誰も帰らず、びしょ濡れの少年が『MATSUZAKA』と描かれたボードを持ってじっと待っている。この少年は未来を信じているんだろうね。ぼくが少年だった頃は、日本はアメリカと戦争をしておりました。
 ああ、ゴッホが画布を抱えて、雨の中を歩いている。“雨の日のゴッホ”ってのはどうだ! 平穏な一日の中のゴッホ……。

 熊井啓さんが亡くなった。合掌。

取材の人たちと成城の町を歩く。後輩の成城大学の諸君と笑顔を交しながら。

町角でパチリ!写されるのもいいが、ぼくはやっぱり写す側の方がいいな。

偶には身内で細やかに食事。とんかつににごり酒でお疲れさま!

恭子さん、パチリ!

千茱萸さん、パチリ!

ぼく、パチリ!

スタジオで恭子さんと福ちゃん、プロデューサー同士。

携帯で配信する「ムービーエッセイ《転校生》シリーズ3本目の編集。

窓の外は、今日は雨でした。

コメント (3)

先ほど、都内では雹まじりの瞬間豪雨。
入梅前のひとあばれ模様です。

雨は絵になりますが、絵を描くのはむつかしいと思います。
写真でも、雨はむつかしいです。。。子供の頃から、雨女でした。
遠足 修学旅行 傘をさし 合羽を着て 時にはびしょぬれで
集合写真におさまっていました。

千茱萸さんの『転校生』のパンフレット 楽しみです。
色もキレイですね。。。日記代わりのデジカメ よいです。

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