写真コミュニティフォトパスTOP > ナビゲーターズ写真ブログ > 内田 正洋の写真ブログ みどりの海へ 〜The way of Ocean Green〜

『みどりの海へ』 The way of Ocean Green


vol.5 海からの視点とシーカヤック

2009年02月27日 11:00 テーマ [ アウトドア ]

僕がアウトドアという言葉を意識し始めたのは、1987年に創刊された雑誌「Field & Stream」(以下:F&S)というアウトドア雑誌に原稿を書き始めたからだった。1899年にアメリカで創刊された雑誌だから、もう110年という長きにわたって続いているが、87年に創刊されたのはF&Sの日本版だった。日本版はとっくに休刊になったが、本家の方はいまだに続いているから半端じゃない。

F&Sは、今でもアメリカでもっとも売れている雑誌のひとつで、内容は主にハンティングとフィッシングの世界を追求する専門誌だ。でも日本版F&Sは、狩猟は対象外だったし、日本オリジナルの企画がメインだった。アメリカの文化を日本に置き換えるのは難しく、日本でのアウトドアは概念がまだ見えていない時代だった。

F&Sとは別に19世紀から20世紀初頭のアメリカには「Forest and Stream」という雑誌があった。こちらは1873年に創刊されたのだが、当時アメリカで一般的になり始めていた、スポーツ的なカヌーの世界を扱っていた。いわゆるカナディアンカヌーによるキャンピングやツーリングをメインにしていたといわれる。この雑誌とF&Sが1930年に合併して今に続く雑誌になったのだが、漁猟と旅の文化が合わさってアウトドア雑誌という概念を生み出していった。それが今の環境保護的な動きへ変化していったと考えられる。

【知床シーカヤッキング】
80年代半ば、アメリカではシーカヤック・シンポジウムというものが開催され始めた。シーカヤックの世界を伝えるためのシンポジウムで、今も続いている。僕が初めて行ったのは88年。その時僕は知床半島でのシーカヤッキングをアメリカの人たちに紹介した。ロシアと日本はまだ国境でもめていることも。 以来、知床に通ってもう20年が過ぎた。これは昨年の秋。遠くの山は国後島。

僕が日本版のF&Sで書き始めたのが、実はシーカヤックだった。この雑誌があったからこそ、シーカヤックと出会えたのである。日本での本格的なシーカヤック記事の始まりだった。トランスジャパン・カヤッキングと題し、毎月のように日本中の海を旅して回った。90年にはその特集で撮影した写真を使い「SEA KAYAKING IN JAPAN」なる写真集のような単行本も出した。当時市販されていたシーカヤックの全カタログや装備に関しても結構細かく言及した本だった。

僕がアメリカのシーカヤック界にすんなりと入れたのは、F&Sジャパンのライターという立場が大きかった。何しろアメリカでは老舗のアウトドア雑誌であり、アウトドアライターといえば社会的地位が高い。もちろん日本では、今でもまったくそんなことはないんだけど、アメリカの実情はそうである。つまり、当時のアメリカのシーカヤック関係者は、日本からF&S のライターがシーカヤックを取材に来るというので、リスペクトしてくれたわけだ。

しかもシーカヤックは、いわゆるエスキモー系の道具。日本人はエスキモー系に近い民族だというのが彼らの印象で、つまりは本物がやって来る、みたいな感覚があったと思う。カヤック民族がアメリカのシーカヤック事情を取材に来たぞ、みたいな感覚だった。

そんな感覚を知った僕には、それからシーカヤックというものに対して責任が生まれていた。知らず知らずだったけど、日本人こそがシーカヤックに責任を持たねばならん、そう考えるようになっていた。

【シーカヤックアカデミー】
アメリカのシーカヤックシンポジウムに倣って、僕らはシーカヤックアカデミーというシーカヤックの勉強会を毎年やっている。有志が集まり、今年でもう11年目。最初は年に1回で、伊豆半島、次は山口県の油谷湾、昨年と一昨年は紀伊半島と天草の2ヶ所で行なった。今年は3月28、29日に三重県北牟婁郡紀北町で行われる。これは2006年のシーカヤックアカデミー油谷での1コマ。

それと同時に、僕にはシーカヤックからの視点が新鮮な魅力だった。海の上に座るような位置で日本の海を旅する。それは海からの視点を教えるものだった。90年に書いた本のあとがきに僕はこう書いていた。「今のところ、僕はまだまだである。シーカヤッカーのひよっこである。海の上での思慮がまだ足りなのかもしれない。そのうち、海の上を漕いでいたら、ピッ!とヒラメクかもしれない」と。

書いてから19年という歳月が流れたけど、その間ずっと僕は海からの視点で生きてきた。それでピッ!と閃いたことが、実は何度もある。シーカヤックという海からの視点を教える道具で旅をするからこそ見えてくるもの。それが日本的なアウトドアの概念を教え、日本の伝統文化を教え、日本列島の自然を教え、そして21世紀に日本人が進むべき方向まで教えてくれる。いや、ホントなんだよな、これが。

【知床シーカヤックシンポジウム】
3年前からは、知床半島でもシーカヤックのシンポジウムを始めた。その年、知床は世界自然遺産になった。僕らは、シーカヤックの利用がどうなるのかと危機感を覚えた。それに答え、環境省はシーカヤックによる知床半島先端部の適性な利用心得を文書化し、世界遺産海域でのシーカヤック利用を認めた。

(つづく)

コメント(1)

”狩る・採る”という行動は、食に繋がるものであったはずです。
なぜ、日本版F&Sでは、”狩る”は除外されたのでしょう??。

1987年には、日本では、”狩る”と言う行動は”食=生存”から、
きりはなされていたのでしょうか。

コメント投稿受付は終了いたしました
ページトップへ戻る