写真コミュニティフォトパスTOP > ナビゲーターズ写真ブログ > 内田 正洋の写真ブログ みどりの海へ 〜The way of Ocean Green〜

『みどりの海へ』 The way of Ocean Green


vol.11 伝統的シーカヤックに目覚める

2009年04月10日 11:00 テーマ [ アウトドア ]

シーカヤックの世界は、その道具のほとんどが輸入されたものだ。シーカヤック自体もアメリカやヨーロッパからの輸入物が多い。つまりアメリカ人やヨーロッパ人といった西洋人が道具を作り、それで僕ら日本人が、日本の海で遊んでいる。

僕はオートバイ乗りでもあるけど、逆にオートバイなんかは、日本人が一所懸命に道具を作り、西洋人がそれで遊んできた。シーカヤックの場合は、その関係が逆転していて何だか痛快な気分だった。

もちろん、シーカヤック文化が日本に入ってきて20年が過ぎたから、日本製のシーカヤックメーカーも数社存在している。日本人の好みに合わせ、ほとんどが日本の中で流通している。輸出はほとんどしていない。日本独自のシーカヤック観も生まれている。

シーカヤックのほとんどは、FRPと呼ばれる強化プラスチックで作られたもので、他にポリエチレンというプラスチックも使われている。いわば石油製品である。日本で作られているシーカヤックは、すべてFRP製で、もっと安く供給できるポリエチレン製のものはまだない。ポリエチレン製は、初期投資が必要で、それに見合うほどの産業じゃないからだ。

また、ファルトボートと呼ばれる折り畳み式のシーカヤックがあり、そちらはアルミなどの骨組みにナイロン系の布という素材が使われる。種類は少ないけど、日本製の折り畳み式シーカヤックもある。こちらは「布舟(ぬのぶね)」なんていう言い方もする。

【布舟と伝統カヤック職人】
カナダ製の布舟を漕ぐ洲澤育範君。彼は日本でも数人、世界でも非常に珍しい伝統カヤックを作る職人さんの1人。北海道の網走にある北方民族博物館のホームページには、彼が再現したアリューシャンのカヤックが報告されている。パドルも彼自身の手によるもの。

本来のカヤックは、木の骨組みに皮革をかぶせた舟なので、プラスチックカヤックより布舟の方が、素材的にはより本物のカヤックに近い。当然乗った感じも柔らかく、プラスチックのシーカヤックは、固い感じだ。本来のカヤックは、柔らかく海を進む感じに見え、その柔らかい感覚が本来はカヤックの持ち味だと思える。でもプラスチックシーカヤックじゃ、その感覚を味わえない。

また、FRPは素材として非常に強固で、元来は宇宙開発の産物。合成繊維と合成樹脂で作られる。強固であるが故に、それを廃棄するのが非常に難しい。漁船やプレジャーボートのほとんどがFRP製になってしまったが、耐用年数が過ぎても廃棄ができないので、社会問題になっている。まぁ日本製のシーカヤックは、絶対数が少ないのでまだ気にならないが、それでも同じ運命が見える。

シーカヤックの推進力を生み出すパドルも、プラスチック製のものがほとんどだ。だから今のシーカヤック文化は、石油製品によって成り立っている。当然だけど、社会に出回る製品のほとんどがそうだから、別にシーカヤックが特別なわけでもない。

【伝統的ハイブリッドなパドル】
これは函館の北方民族資料館に展示されているアリュートパドルのブレードを模したもの。洲澤君の手によるもので、僕の最近の愛用品。1875年に千島列島の新知島で採取されたパドルブレードとカーボンシャフトの組み合せ。「イサナ双刃櫂シムシル1875」という名で市販されることになった。

廃棄に困るFRPは、性能は素晴らしいけど、どこかに危うさがある。未来の連中に対して「ホントにこの素材でいいの?」と自問してしまう自分がいる。どうもスッキリしないのだ。でもFRPシーカヤックによって今のシーカヤック文化は成立してきたから、悪いとも言えない。ありがたい(有り難い)素材だというのも確かだ。

そんなこんなで、僕は新たなというか、歴史を見直しながら温故知新的なシーカヤックの世界を、これから追求し始めていく。すでにパドルの方は、かなり使い込んだ。FRPのシャフトは使うが、水かきの部分はブレードと言うけど(水刃だな)、そこには木を使う。水刃の形状は伝統的なカヤックで使われていたものを踏襲している。

【函館市北方民族資料館】
函館の北方民族資料館には、新知島で使用されていた3人乗りカヤックの現物が展示されている。以前は市立博物館にあった。洲澤君、それと鳴門で『ホライゾン』というカヤックショップを経営する尾崎志郎君と、僕は「イサナ・カヤック」という伝統的シーカヤック継承プロジェクトを始める。

というわけで、僕は伝統カヤック文化を継承するためのプロジェクトを、仲間たちと始めるのである。もちろん市販できるように努力する所存である。

(つづく)

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