2010年8月19日
クリエイティブフォトの撮り方と楽しみ方。
第一回目のコンテストの結果から探ってみました。
いい作品は表現手法を超えて、人の心を動かす。
何よりも、自分の感性を信じてシャッターを切る。そこには新たな発見があるはず。既成概念を軽く飛び越える自由な翼をもって、写真を撮る。そんな歓びを、たくさんの人に知ってもらいたくって「クリエイティブフォト・コンテスト」が開催されてきました。
では、どうやって感性の尺度を測るのか?ここはなかなか問題です。ピカソの「ゲルニカ」が好きな人もいれば、ミレーの「晩鐘」が好きな人もいる。感性は人それぞれ、だけど優れたものには見る人の心を動かすパワー、つまり感動があります。
横尾さんの眼に、クリエイティブフォトのヒントがあった。
見る人の心を揺さぶる写真。その一枚を選ぶために、「クリエイティブフォト・コンテスト」では多くの人にたくさんの感動を与えているアーティストの方に審査をお願いしています。第一回目は横尾忠則さんでした。審査をしてくださった横尾さんの総評を読むと、そこにはクリエイティブフォトの撮り方のヒントがあります。
「私写真」というテーマをだされた横尾さんは、写真を選ぶ基準に『目の発見』というものを設定されました。それは、既にどこかに存在しているものに価値を与えることだとおっしゃっています。そうして選ばれたグランプリ作品は、確かに“見るチカラ”が感じられます。普段なら見逃すような風景に光をあて、命を与える。それもクリエイティブの大切な作業なのですね。
さらに、横尾さんが選んだ写真の数々を見ていると、いくつかのポイントが浮かび上がってきます。それは、◎一言で言い表すことのできないモチーフ ◎大胆な構図 ◎日常的な被写体 ◎主観的な着眼点 ◎撮る自分も見る人も楽しめるエンターテイメント性 などです。こんなことを意識しながら、あなたもクリエイティブフォトに挑戦してみませんか。
第一回クリエイティブフォト・コンテスト受賞作品から
思いもよらぬ写真に、感性が刺激される。
目で見た風景と撮影した写真が違って見えることに、思わぬ発見をするときもあります。そこでオススメなのがOLYMPUS PENにあるアート機能です。アートフィルターやマルチアスペクトなどを駆使すれば、想像以上の写真に出会うことがあります。そしてその写真が、あなたの感性を刺激してくれるのです。
感性で写真を撮り、撮られた写真を見て感性が刺激される。創造力を高めるクリエイティブフォト。そこには、表現する楽しさが満ちています。
2010年6月3日
「私にとってカメラは、何かを探して歩く道具でした」
新作「トイレット」公開を控えた、
荻上直子監督に聞きました。
「第二回クリエイティブフォト・コンテスト」の審査委員長をつとめていただく、映画監督の荻上直子さん。映画を撮り始める前は、高校、大学と写真を撮り続ける日々だったそうです。当時のカメラへの思い、そして最新作「トイレット」のことなどをお聞きしました。
高校の頃はカメラが大好きで、ずっと写真を撮っていました。
高校生時代から大学まで、ずっと写真を撮るのが好きだったという荻上さん。最初のきっかけは、両親と旅行に行ったときに撮った写真だったといいます。
「その時は適当に風景写真などを撮って、特にうまく撮ろうという意識もなかったんですが、現像されてきたら意外ときれいに撮れていて面白いなあと。それから、当時の重い一眼レフを持ち歩いて写真を撮り始めました。現像も自分でやっていました。とても楽しかったです。もちろん普通の風景写真なども好きで撮っていましたが、まさに今回の公募テーマで出させていただいたような、なんだか変なモノ、オカシイことを探して歩いていました」
代表作「めがね」では主要登場人物がすべてめがねをかけていたり、「メルシー体操」というヘンテコな体操が出てきたり。荻上さんの映画では、なんとなく「変」なことがさりげなくユーモラスに描かれています。今回の公募テーマ「身近な変」は、荻上さんにとって創作の原動力なのかもしれません。
「私にとってカメラは、何かを探して歩く道具でした。日常にあるちょっとおかしなこと、変なこと、きれいなこととか。カメラを持つと『何か撮ってやろう』という気持ちになる。当時はそんな感じでした」
カメラを持っているときと持っていないときとでは意識が切り替わる、と荻上さん。自分の感性に響くモノをキャッチする道具として、カメラを持ち歩くこと。ちょっとした気持ちの違いなのかも知れませんが、こうしたことにこそ、クリエイティブな才能を磨く秘密があるような気がしました。
荻上さんの転機は、大学時代に訪れました。コマ撮り写真を使った「パラパラ写真」をつくったときに「絵が動くのが面白い」と思い、大学卒業後、本格的に映画制作を学ぶために南カリフォルニア大の映画学科へ。以降、映画監督としての道を進まれてきた荻上さん。カメラでの写真撮影は、今回のOLYMPUS PENが久しぶりだったそうです。
「今回、すごく久しぶりにカメラを持ちました。面白いですね。本当に押すだけできれいに撮れる。フォーカスも全部合わせてくれるし、いいなと思ったらすぐにシャッターを切れば撮れる。昔は瞬時に絞りとフォーカスを合わせて撮らなければいけなかったけれど、今はすごく身近に撮れる感じです」
「トイレ」がストーリーの鍵になる?! 最新映画「トイレット」。
(c) 2010“トイレット”フィルムパートナーズ
「私の映画にはあまり悪い人が出てこない、とよく言われます。自然にそうなっちゃうんです。悪い人が好きではないので(笑)
荻上さんは、自分の撮る映画についてこんな風に語ってくれました。「トイレット」は、荻上さんの3年ぶりの新作です。今回の作品は「家族」がテーマとのこと。舞台は北米。日本人キャストはおばあさん役のもたいまさこさんだけ。しかも「トイレ」が重要な役割を担うとあって、やはり荻上さんならではのユーモラスな物語が想像されます。
「今回の映画は、バラバラだった家族が、あるきっかけでひとつにまとまっていくお話です。全編英語ですし、行ったこともなかった北米で、まったくはじめて会った人たちと仕事をして一緒につくったというのは、自分にとっては新しいチャレンジでした」
ずっと同じところに止まっているよりも、やるからには次のステップとして、違うことや新しいことにチャレンジしていきたいと語る荻上さん。穏やかな印象の内側に、クリエイティブな仕事への情熱が秘められていました。
「この映画で、全編英語で撮影しながらも自分の日本人としてのアイデンティティみたいなものを表現できた気がします。どこで撮っても、何語で撮っても、私らしいカラーをつくり上げることができる。そんな自信に繋がりました。映画を撮ることについては、どこの国も変わらない。言葉の違いも何とかなるものです」
荻上さんの新作映画トイレットは、8月28日公開の予定です。それに先だって開催される第二回クリエイティブフォト・コンテスト、応募締切は7月8日です。荻上さんの感性に響く「身近な変」をテーマとする作品に、ぜひチャレンジしてください。最後に、荻上さんからメッセージをいただきました。
「写真を撮るときのワクワクした感じを、一緒に味わいたいと思います。皆さん、応募をよろしくお願いします」
2010年3月25日
「Y字路」撮影秘話、「僕とカメラ」の話。
横尾忠則さんに、PEN STYLEが聞きました。
PEN STYLE「クリエイティブフォト・コンテスト」の審査委員長をつとめていただく横尾忠則さん。もうずっと以前から、カメラを日常的にお使いになっているとのことです。そんな横尾さんに、「自分にとってのカメラ」についてお話を聞きました。
人が誰もいなくなるまで待った、「Y字路」の撮影。
横尾さん初の写真集「東京Y字路」は、横尾さんの長年のモチーフ「Y字路」を写真で表現された作品です。横尾さんは、この「Y字路」の撮影で東京23区をくまなく歩き回ったといいます。そして驚くべきことに、どの「Y字路」の写真にも、人の姿は映っていないのです。お話はその「Y字路」の撮影時のことからはじまりました。
「『Y字路』を撮る時のことですが、僕は歩いている人が誰もいなくなるまで、その場でずっと待っているんです。その瞬間がきた時に、シャッターを切る。そんなの今は画像処理で人を消してしまえばいいのかもしれないけれど、その写真を撮った、という身体感覚以外の要素は導入したくなかったのです」
横尾さんにとってシャッターを切る動作には、特別な意味があるようです。それはある瞬間の光景を、目に焼き付けるだけでなく、体にも記憶させるための行為なのかもしれません。
「たとえば空に飛行機が飛んでいる。それが気になったら、ただ漫然と見ているのではなくカメラのシャッターを切る。そうすることで、体にその記憶を『移植』するのです。後からプリントする必要はないんです。結果ではなく行為優先ですから。シャッターを切ることは、自分がそれを『見た』という印なんです」
写真を撮る。それは、ある瞬間をつかまえるということ。そして、体に取り込むこと。横尾さんの言葉には、そんな考え方が込められているような気がします。横尾さん自身とカメラとのユニークな付き合い方について、さらにお話は続きます。
シャッターを切って、「見た」ことを体に刻み込む。
「シャッターを切るのは、体にすりこむため。後は、忘れてしまってもいい。僕はずっと、そういう風にカメラを使っていました。そうして『見た』ものが体に刻み込まれていって、創作の力になるような気がします。ただシャッターを切るときに、作品をつくろうとしてはいけない。作品になるかどうかはどうでもいい。体に記憶を蓄積させていくんです。それがクリエイションです」
作品としての完成度にこだわるのではなく、まず『見た』という体験を体に刻印する。この『見た』という行為には、その場所の温度や、匂いや、自分の気持ちなども、すべて含まれているのではないでしょうか。とても難しいお話でしたが、横尾さんの創作の視点にほんの少しだけ触れられた気がしました。
確かに、クリエイティブフォト・コンテストのテーマ解説でも「自らがシャッターを切った写真」と記されています。今回の横尾さんのお話を聞くと、その言葉にも深い意味があったのだと感じます。未応募の方はぜひこのお話しを参考にして、ふるってクリエイティブフォト・コンテストへご応募ください。