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Vol.15:“常識”破りの提案

拝啓 設計者より
Vol.15 “常識”破りの提案
世界初プログラムEEシャッター搭載カメラ
オリンパスペンEES
オリンパス ペンEES
オリンパスペンEESは昭和37年に発売された。シャッター速度は1/30秒と1/250秒で、明るさに応じてシャッター速度が自動的に切り替わり、適正露出の範囲が拡がった。焦点調節は3点ゾーンフォーカス。 このオリンパスペンEES以降、プログラムEE方式カメラの全盛時代を迎えた。
時代の趨勢

オリンパスでは、昭和34(1959)年12月5日、世に先駆けて、日本最初の35mmEEカメラ「オリンパス・オートアイ」を既に発表していた。絞りやシャッター、距離計など通常の機能を全て備えた高級コンパクトカメラに、EE機能を追加した最先端を行く35mmカメラであった。

シャッターはB(バルブ)、1秒~1/500秒、レンズはF2.8~22、ファインダーは距離計連動式と、従来のマニュアル・カメラとして全ての機能が付いていて、それらを駆使しながら撮影することができる。その上で、自動露出を使うことのできる絞り優先のEEカメラとなっていた。

バックをボカしたり、動体を止めて写したり、撮影目的に合わせて距離やシャッターを自分でセットすれば、高度な撮影テクニックを駆使しながら自動露出ができる高機能EEカメラである。しかし、それだけに難しい写真技術を習得しなければならない。

市場の流れとして、このカメラに続き、次の年の昭和35(1960)年8月22日、キヤノンより発表され話題を集めた「キヤノネット」も同じ使い方であった。

どうも、従来型の高機能マニュアル・カメラの上に絞り優先のEEを追加する方式が、男性ユーザーを中心とした市場での評価は高かった。

当時のオリンパスペンのカタログの紹介
カタログ

カラー撮影に経済的なペンサイズ。
どこでも手に入る35ミリフイルムが2倍に使えるということが、カラー撮影に素晴らしい魅力を生みだしました。
(カタログより抜粋)

経済的なオリンパスペンが身近になったことを表現したカタログのコピー。

カタログPDFデータ
カタログ

若い女性に…
初めての方に…
カラー撮影に…
おすすめします。
(カタログより抜粋)

女性や初心者を配慮した製品作りは、現在のデジタル一眼レフカメラE-410に通じる信念がある。

カタログPDFデータ
オリンパスの歩み「カメラの歴史」
「ペンEE」提案時の評価

当時の企画会議では、従来のカメラに先進的な機能がどれだけ新しく追加されたかが評価基準の中心になっていた。

そんな環境の中で、「ペン」発売直後の企画会議に、高度な撮影技術をいっさい無視した、シャッターボタンを押すだけで写るカメラ「ペンEE」を企画提案したものだから、当然、拒否されてしまった。

設計者としては、技術的に時代の最先端を突っ走る夢の全自動カメラだと自信を持っての提案であった。しかし、残念ながら列席の皆さんの目には、どうもオモチャとしか映らなかったようである。

提案した「ペンEE」にはマニュアル機能はいっさい付いていない。シャッターは1速(後に2速の自動プログラム)、レンズは固定、絞り目盛りもない。新しい機能を追加するどころか、むしろ技術的には一歩も二歩も後退したかに見える。カメラを手にしても何一つ操作できず、目盛もない。これではどう見てもオモチャとしか思えない。

販売部門の支店長会議でも当然“NO”と言う結論であり、企画会議の委員全員から「常識外だ、すぐ中止せよ」と猛反発をくらってしまった。

発表後の事だが、輸出品を検査する検査協会から「これはカメラじゃない。売れないから止めなさい」と言われるし、大阪の大手カメラ店からは、「俺たちにオモチャを売らせる気か」と怒鳴られたという話も入ってきた。

確かに、一つ一つのメカニズムを単独でみると技術的には後退したかに見えるのだが、それぞれ目的があってのことである。それらの機能を役割通りに一つに統合すると、シャッターボタンを押すだけで写る初心者用全自動カメラに変身すると考えた。

しかし、それはあくまで設計者の一人よがりの読みであって、市場での一般の人には通用しない“常識”破りの無謀な提案と映ったらしい。提案した設計者まで変な人という目で見られた。

残念ながら、全ての撮影に適合する万能カメラは存在しない。そこで、設計者としては幅広いユーザーの各種撮影現場を想定しながら目的とする撮影を絞り込み、そこに焦点を合わせながら設計するものである。

ユーザーサイドから見たのでは見当もつかないような角度からの検討も加えた上で設計を進める。

しかし、万能ではないだけに開発目標以外の撮影では不便を感じる場合もある。しかし、そこには開発目標を絞り込んだ設計者の拘りもあるので、ユーザーとしても自分の撮影目的を十分に確かめた上で、“常識”に拘らず、要望に合ったカメラを選ぶ必要がある。