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Vol.19:シリーズ化発想の原点

拝啓 設計者より
Vol.19 シリーズ化発想の原点
ハーフサイズの役割
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6×6判二眼レフやセミ判スプリングカメラなど、撮影画面の大きいブロニーフィルムを使うカメラがそれまでの主流であった。

1950年代になって、フジフィルムのネオパンSSや小西六のコニパンUSSなどISO100の高感度フィルムが登場。フィルム性能の向上に伴い小型で使いやすい35mm判カメラが急速に普及し始めた。

ブロニーフィルムを使うカメラで一番小さいセミ判でも画面サイズは60×45mmである。36×24mmの35mm判はその1/3の面積しかなく、フィルム性能が良くなったとはいえ大伸ばしを前提とするメーン写真を撮るにはやや役不足を感じるくらいであった。

そんな頃、更にその半分のハーフサイズを提案しようと言うのだから、とてもメーン写真をハーフサイズで撮るという勇気は出ない。

そこで、メーンの写真は35mm判の一眼レフなど画面サイズの大きいカメラに任せることにして、これから提案するハーフサイズは、あくまでカメラの普及やサブカメラに徹することがその役割だと割り切りたかった。

高度成長期にさしかかり、先行するドイツに追いつけ追い越せと少しでも高機能・高性能の追求に明け暮れていた頃である。

技術的に前へ前へと進もうとする環境下では、ハーフサイズだからといってカメラの機能を低く抑える発想は持ちにくい。

そのはやる気持ちを抑えるためにも、あえてハーフサイズの限界と役割を明確にして、開発途中でのコンセプトが揺らぐことのないようにした。

シリーズ化の発想

35mm判カメラの市場導入時も、各社から数多くのカメラが発売されるようになって初めてその普及は加速され、市場の活性化に繋がっていった。

魅力ある新機能の搭載に全力を投入し次々と新製品は出されるが、そこには常に前進あるのみで、機能を抑えたカメラも必要とするようなシリーズ化を考える余裕や発想はなかった。一歩進んだ新型が出るたびに、旧型は古くなり消えいく運命となっていた。

ハーフサイズも同様の見方から、2号機となる「ペンS」を出したとき1号機の「ペン」に取って代わる新型の登場と勘違いされて、何時、旧型1号機の生産を中止するのかとの問い合わせがあった。しかし、1号機「ペン」の役割はハ−フサイズの中核をなすカメラという位置付けなのて、新型が何台出ても旧型とはならず最後まで生産は続けられた。

ハーフサイズという新ジャンルのカメラを提案するにあたり、それまでは気にしなかった市場導入方法を考えてみた。

先行する「オリンパス・ペン」1機種のみの提案では使い方も固定されるし、ユーザーも限定されて普及も今一つはかどらなくなる。

普及を促進させるには、幅広い一般ユーザーが何処でも使えるように各種のカメラを揃える必要があった。

しかし、画面の縦横比やレンズ長の異なる新しい画面サイズを提案しようというのだから、他社に新製品を求める訳にはいかない。それら各種のカメラは自分の手で作るしかない。

1機種入魂の従来型の開発手法とは異なるが、「ペン」設計の当初から複数のカメラを作ってハーフサイズ・カメラをシリーズ化させようとを考えた。

あまり例のない新ジャンルの開拓に直面して初めて考察の幅を広げさせられた。

「ペン」カメラシリーズの展開
オリンパス ペンシリーズ

カメラのシリーズ化を前提とする展開では「ペンS」が時期的に後から発売されても、先行の「ペン」とは新・旧といった関係にはならない。

シリーズ化の展開では、それぞれの機種にはそれぞれの役割分担があり、新型が出ても前の機種の生産をやめるとかそれに取って代わるものではない。

シリーズの中でのカメラのポジショニングは決まっていて、「ペン」カメラシリーズの完成に向け空白部分を1つずつ埋めていく新型である。シリーズ化が完成するまではどの機種も旧型とはならず消え去ることもない。

最初から複数のカメラを作ってシリーズ展開するという進め方は、それまでに経験のない発想の大転換であった。

一度に全シリーズカメラを揃えて出せれば解かりやすいが全てを設計するには時間もかかる。シリーズ化の発想が社内外に定着するまでにはかなりの日時を要した。

ハーフサイズを幅広く浸透させようと先ずはユーザー層を二分して展開することにした。

既に高価なカメラをお持ちで高度な写真技術を取得されている方々向けのサブカメラと、全くカメラのことを知らなくてもボタンを押すだけで写る全自動のEEカメラとの両面作戦である。それぞれのシリーズには初、中、高級機の3台、2本立てなので合計6機種の展開で対応する計画を立てた。

しかし、そこにはメーン写真を写すためのハーフサイズ一眼レフは存在しなかった。