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Vol.20:想定を超えた展開

拝啓 設計者より
Vol.20 想定を超えた展開
“ペンめいさく展”の波紋
昭和45年開催 第11回「ペンすなっぷめい作展」より。イラストは人気漫画家の佃公彦氏にお願いした。

ハーフサイズ・カメラ普及活動の一環として、文芸春秋社の協力を得て実施された有名文化人による写真展は大変好評を博した。

“ペンめいさく展”と名づけられたこの写真展では、いつもは写される側に立つ文化人の方々に“ペン”を使ってもらう企画で、どの方もシャッターボタンを押しただけで立派な作品を写されていた。

向こうからこちらサイドを写したり、あまりお目にかからぬ楽屋内での生の姿が写しとめられていた。飾らぬ被写体の新鮮さや率直なアングルの良さもあって写真展も盛り上がり、押すな押すなと沢山の人が集まった。

写真展に出品するほど大きく引き伸ばしてもそれほど粒子の粗さが目立たず、ピントも確りしていて、写した本人が目を見張るほどの出来栄えであった。

“ペンめいさく展”に出品された方や写真展を見に来られた方々から、「こんなによく写るのだから、ハーフサイズの一眼レフをぜひ作って欲しい」 という強い要望が多く寄せられたらしい。そんなある日、設計部長を兼務していた桜井常務から、「そろそろ、ハーフサイズの一眼レフを考えてみるか?」と誰にという指名も無く声が掛かった。

サブとか初心者用に限定すると考えていた「ペン」を、写真撮影用メーンカメラへ昇格させようという、想定外の要望であった。

幸い、設計者の好奇心から余暇に考えてあったハーフサイズ一眼レフの構成案メモを机の引き出しの底から取り出し即座に提示した。

こんな機会に遭遇してみて、目の前のテーマに囚われずそれ以外の研究もやっておくものだとつくづく思った。

日々の仕事に追われて

メーン写真の撮影は35mm判一眼レフ以上の大きいカメラに任せることにして、小型画面のハーフサイズの役割は写真の普及とサブカメラに徹するのだと決めていた。6機種のペンシリーズ・カメラを展開するに当たっても敢えて一眼レフはその中に入れなかった。

この施策を決めた背景にはハーフサイズを早く市場に定着させるという本来の目的に加え、更にもう一つ、自分自身のはやる気持ちを抑えることにあった。

しかし、次々と出される新型カメラによって技術の先進性を競う市場環境下では矢張り心安らかではいられない。案の定、意識的に排除したはずのハーフサイズ一眼レフを、もし作るとしたらどんな形になるだろうかと、つい設計者としての技術的好奇心が頭をもたげてきた。

設計室では各テーマ毎にチームを作り日程に追われながら忙しく設計を進めている。たまたま新人教育用の試作機「ペン」がヒットしたからといって、先輩たちを巻き込んでの「ペンカメラ」の設計チーム作りなどできるはずがない。

営業部門からは次の「ペン」を早く作れとせっつかれながら、設計の勉強だったとはいえ一人で「ペン」カメラのシリーズ完成を目指す忙しい日々となっていた。

技術的好奇心
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仕事を離れ、自分を取り戻せる時間となると夜寝る前くらいなので、気になる一眼レフについて考えるのもこの時間帯となる。設計図を描くわけにはいかないが、頭の体操くらいの気持ちからこんなメカニズムはどうだろうとか、だめならこうしてみようと毎日思考を巡らせていた。軽い気持ちで取っ組み始めたものの一眼レフという同じ条件設定と思っていたが、進めてみるとあまりにも条件が違いすぎていてとても一筋縄では解決しないことが分かってきた。

思考能力の柔軟性を試すには丁度よいテーマだと気を取り直し、毎日、帰宅するのが楽しみになるほど取り組んだのがこのメモであった。

仕事に使うわけではないので、出来上がったメモは引き出しに仕舞ったまま何時しかその存在さえも忘れていた。一眼レフの話が出て思い出し、久しぶりにメモを取り出したが、こうした横道的研究も役に立つことがある。