吉住 志穂の

天上の華

天より舞い降りた華は
彼の世と此の世の境を結ぶ

燃え立つ火の穂
ねじれる紅の帯

光に導かれども
超えられない
超えてはならない
天人の道

此の地に生まれて
咲かせる幸福の花
彼の世に還って
咲かせる魂の花

天より舞い降りた華は
彼の世と私の境を結ぶ

「幸せ」と唱えれば
胸いっぱいに広がって
心に咲き乱れる赤い花

想いをつなぐ
曼珠沙華

曼珠沙華は私の好きな花のひとつです。真っ赤な色、曲線的な造形がとても個性的ですが、何より、花が醸し出す神秘性に心を惹かれるのです。曼珠沙華には多くの別名があり、開花時期が秋の彼岸と重なるので彼岸花とも呼ばれますが、他にも死人花、地獄花、幽霊花などの負の印象の名前が多くあります。一方で、天人の花という、相反する名前も持っています。どちらにせよ、昔から人々はこの花に「あの世」を連想してきたようです。日本人はあまりにも美しすぎるものに対して、桜と同様に、なにか現実を超えた力が宿っていると感じてきたのでしょう。今回は全作品ともに曼珠沙華でまとめました。群生の作品を異界への道、そして、陰陽併せ持つ作品には生命の喜びや悲しみを表現しました。この地で生きることの尊さを花が伝えてくれているようです。

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