OM-D E-M1 Mark IIで風景写真を撮る

撮影機能:システム全体としての高速性や使い勝手

OM-D E-M1 Mark IIが、ミラーレスカメラの常識を越えた高速性能を特徴として登場したことは冒頭に述べたとおりですが、実際に使ってみると随所でそのスピードを実感します。デジタルカメラが登場した当時のスピードを自転車に例えるなら、現在はF1マシン並みと言ったところでしょうか。大げさすぎるかもしれませんが、デジタルカメラの黎明期から使っている身としては、それくらいの差を感じていることも事実です。

OM-D E-M1とOM-D E-M1 Mark IIにしても、やはり世代の違いは感じざるを得ません。起動時間や画像再生時のコマ送り速度、RAWデータの書き込み速度などは、確実にスピードが増しています。どれくらい・・・と数値で測ったわけではないので、体感をお伝えするしかありませんが、例えば書き込み速度などは2倍以上のスピードに感じます。コマ送り速度も劇的に速くなっているようです。こういった部分は、撮影にリズムを作ってくれる意味でとても重要です。

また、非常に手ぶれしにくいという意味で手持ち撮影にアドバンテージがあるOM-D E-M1 Mark IIは、グリップの形状も重要になってきますが、OM-D E-M1 Mark IIはボディーがOM-D E-M1より少し大きめにできていることもあって小指のかかりがよく、しっかりと握り込める印象があります。「手持ち撮影マスター」の称号を与えたいくらいです。

バッテリーの撮影コマ数が増えたことも大きなメリットです。バッテリーは「BLN-1」からOM-D E-M1 Mark II用に「BLH-1」へと変更になっていますが、そのため一回りほど大きくなっています。しかし従来は約350枚程度だった撮影コマ数は、約440枚へと延び、体感的にはもう一仕事できるといった印象を持つにいたっています。

さらにプロにとってはダブルスロット化したことも多大なメリットと感じています。決して失敗のあってはならない仕事のデータが、カード不良によって消失してしまった事故を経験した身としては、2枚のカードに同じデータを記録させることによって、常に安心が得られるこの機構は、歓迎以外の何物でもありません。

とても便利に使っている機能を1つ挙げるとすれば、モードダイヤルに搭載されているカスタムモードです。これは好みの設定を登録しておき、ダイヤルを回すだけでその設定を瞬時に呼び出せるというもので、私は「C1」にハイレゾショット用の設定を、「C2」には手持ち撮影用の設定を登録しています。ハイレゾショットの撮影中であっても、「C2」にダイヤルを回すだけで即座に手持ち撮影に移行でき、「C1」に戻せばすぐにハイレゾショット撮影に戻れます。もしもカスタムモードを使ったことがないのなら、ご自分の撮影スタイルに合わせて設定を登録し、ぜひ使ってほしいと思います。

「C2」による手持ち撮影

  • ISO:AUTO(上限800)
    ※画質優先のためISO800選択
  • ドライブ:単写
  • 絞り値:F4
  • 画質モード:RAW

「C1」によるハイレゾショット撮影

  • ISO:200
  • ドライブ:ハイレゾショット
  • 絞り値:F5.6
  • 画質モード:50M F + RAW

どちらの写真も同じお寺の境内での撮影です。桜を手持ちで、石垣をハイレゾショットで撮影しています。カスタムモードを切り替えるだけで簡単にハイレゾショットが撮れるため、ハイレゾショットの写真を撮る機会は確実に増えます。

撮影機能:水風景撮影に有利なISO64

フィルムカメラの時代から写真に親しんでいる場合、OM-D E-M1 Mark IIのベース感度であるISO200は少々使いづらいと感じるかもしれません。とくに風景撮影の場合は水を対象に選ぶことが多く、スローシャッターになりにくいことが理由でしょう。もちろん、NDフィルターを使えばスローシャッターにすることはできますが、そういう問題ではなく、カメラのベース機能として低感度が使いたいという気持ちはよくわかります。

そんな要望に応えるため、OM-D E-M1 Mark IIにはISO感度に「LOW」という項目があり、これを選ぶとISO64が使えるのです。ISO200と比較すれば1.3絞り分だけ光量が少なくなるので、明らかなスローシャッター効果が得られます。スローシャッターを選びたい場面で使ってみてください。

ISO200

ISO64

ISO200

ISO64

ISO200とISO64を同じ場面で比較してみました。明らかにISO64で撮影したほうがスローシャッター効果が現れ、水の表情がしなやかになっていることがわかります。

撮影機能:深度合成

OM-D E-M1 Mark IIには「深度合成モード」が搭載されています。これは1回のシャッターで、手前から奥までピント位置を自動で変えながら8回撮影し、それをカメラ内で合成するという機能です。これを使うと、例えば落葉にはピントがきているのに、背景はボケているという理想的な表現を行うことができるのです。

設定方法は以下の手順のとおりです。

  • ①「撮影メニュー2」から「ブラケット撮影」の「ON」を選択
  • ②「Focus BKT」の「ON」を選択
  • ③「深度合成」の「ON」を選択
  • ④「フォーカスステップ」を任意選択

以上を設定してシャッターを切るだけです。正確に行うためにはカメラを三脚に固定することをオススメします。加えて、深度合成にはレンズの制限がありますので、以下の7本のレンズを使う必要があります。

「フォーカスステップ」は、ピントを合わせた位置を中心にして、どの程度まで深い被写界深度を得るかを決める項目です。10段階の設定が可能で「10」は被写界深度が深くなり、「1」は浅くなります。場面と狙いに応じて被写界深度の深さは異なりますので、何度か数値を変えて試すことをオススメします。また深度合成された画像は、フレーミングをした画像より上下左右で約7%ほど狭くなるので、それをあらかじめ想定して構図を決定することが必要です。

01. フォーカスステップ=10

02. フォーカスステップ=5

03. フォーカスステップ=3

通常撮影

倒木に生えていたキノコを60mmマクロで撮影しました。ピントは手前のキノコに合わせていますが、もっとも自然な仕上がりになったのはフォーカスステップを「5」に設定した「02」でした。「03」は少し被写界深度が浅くなり、うしろのキノコにピントがきていません。

01. フォーカスステップ=10

02. フォーカスステップ=5

03. フォーカスステップ=3

通常撮影

コケの上の落葉を撮影しました。ピント位置は落葉の中ほどにしていますが、こちらの写真ではフォーカスステップを「10」に設定した「01」が、落葉全体にピントがきて狙いどおりとなっています。