星空を一番撮りやすいカメラ OM-D E-M1 Mark II

「オリンパスのカメラで星空ですか?」などと言われていたのは十数年前。その評価を跳ね返すべく開発陣は努力を重ね、2012年にOM-D E-M5が登場。さらに星空を撮影しやすくなったのが、OM-D E-M1 Mark IIだ。この記事では、OM-D E-M1 Mark IIの星空撮影に便利な機能を紹介するとともに、星空撮影の基本、「構図」「ピント合わせ」「写真の明るさ調整(適正露出)」を説明する。(写真家 石原大稔(だいとしぃ))

1.お手軽星空撮影

星空撮影に使うレンズは広角レンズがお勧めだ。焦点距離でいうと、10~14mmあたりが使いやすい。ズームレンズの場合、M.ZUIKO 12-40mm F2.8 PRO、M.ZUIKO 14-42mm F3.5-F5.6の一番広角側。単焦点レンズの場合は、M.ZUIKO 12mm F2.0あたりがお勧めになるだろう。もちろんこれ以外のレンズでも良い。

撮影手順紹介

1.ピント合わせ

まずは、S-AFでピント合わせを行う。この時S-AFは1点フォーカスにして、ピント合わせでどこを狙うかを決めること。全面にしているとピントが迷いやすい。ピントが合ったらMFに切り替える。ピントをMFに切り替えることにより、構図を変えてもピントの合わせ直しが必要なくなる。MFへの切り替えはスーパーコンパネを使うと簡単だ。OKボタンを押してスーパーコンパネを出して、カーソルキーでS-AFからMFに切り替えればよい。スーパーコンパネが出せない人はこちら

2.撮影

ピントが合ったら次は撮影だ。撮影モードはMモード(マニュアルモード)に切り替えよう。
ISO設定は街中ならISO200、暗いところならISO1600に設定する。絞り値は開放、つまりレンズの一番小さな値にする。最後にシャッター速度だが、BULB(LIVE BULB)かTIME(LIVE TIME)にする。シャッター速度をBULBかTIMEにして、MENUキーを押すとLIVE BULB/TIMEの表示更新周期を変えられる。周囲の明るさにもよるが、2~4秒あたりが適当だろう。そして、シャッターボタンを押すと撮影が開始される。すると、画面が更新されていくことがわかるだろう。そして、ちょうどいい明るさになったところで撮影を終了すればよい。

ライブバルブの表示更新周期の設定を変更するには、シャッター速度をBULB(LIVE BULB)に設定した状態でMENUキーを押せば良い。

表示更新周期は街中なら1~2秒。天の川の見えるような暗いところでは、4~8秒ぐらいが適当だ。表示更新周期は、値を変えた後にOKボタンを押さないと確定されないことに注意。

ライブバルブもライブタイムも、シャッターボタンを押す動きに合わせて、露光開始、露光停止をコントロールするという点では同じだ。バルブでは、シャッターボタンを押し続けている間、シャッターを開き続け、離したらシャッターを閉じる。タイムでは、シャッターボタンを押したらシャッターを開いて、もう一度シャッターボタンを押したらシャッターを閉じる。実際やってみるのが分かりやすい。

3.明るいところでのピント合わせ例

街中で撮影する場合は、できるだけ離れた街明かりで照らされているビルの壁面などでピントを合わせるのがお勧めだ。このとき、照明など直接輝いている部分を狙うのではなく、少しずれた照明で照らされているビルや建物の壁面の境目などを狙うのが良い。例えばこの写真の場合、丸を付けているあたりを狙うのがお勧めだ。

  • 明るいところでのピント合わせ例

4.暗くて目標物のないところでのピント合わせ例

明るく照らされている部分が無い場所では、10mぐらい離れた場所に照明を持った人に立ってもらい、そこにピントを合わせる。このときの注意点としては、照明を直接カメラの側に向けると逆にピント合わせしずらくなるので、胸元などを照らしてそこにピントを合わせるとよいだろう。このとき、周囲で撮影している人がいると、明かりをつけること自体が迷惑になるかもしれない。撮影地にほかの方がいる場合、挨拶や、照明などをつける前の声がけなど、忘れないようにしたい。

周囲の明るさに左右されずに、写真の明るさを見極めるのは難しい。そのため、ライブバルブ中左下にヒストグラムが表示されている。このヒストグラムの山(空の明るさを示している)が、ヒストグラム画面の左から1/4~1/3あたりに来た時に、シャッターを閉じるとちょうどいい明るさになっている。例だと、表示更新可能回数が10/24あたりから13/24前後がちょうどいい明るさと言えそうだ。

このようにすれば、素早く比較的簡単に星空撮影できる。しかし、カメラやレンズの性能を100%引き出して撮るには、いろいろなことを学ぶ必要がある。これ以降のパートでは、OM-D E-M1 Mark IIの機能を生かして素晴らしい星空を撮るための方法を伝授する。

2.ライブビューブースト2で構図合わせ

OM-D E-M1 Mark IIに搭載されている星空を便利に撮るための機能。その中でも一番便利で画期的なのがライブビューブースト2だ。この機能は、OM-D E-M5 Mark II以降、OM-D E-M1 Mark II/OM-D E-M10 Mark II/PEN-Fなどに搭載されている。※初代OM-D E-M1にもVer2.0以降で搭載された。
まず、このライブビューブースト2を紹介する。

普通、星空を撮ろうとして夜空にカメラを向けても、ファインダーや液晶画面越しに見えるのは、明るいレンズを使っても2~3等星ぐらいまで。天の川までは見えない。しかし、ライブビューブースト2を使うと天の川はもちろん地上と空の境目までしっかり確認でき、素早く構図合わせができる。一度でも空の暗いところで星を撮ったことのある人には、そのありがたさが身に染みるはずだ。

ライブビューブースト2を使うのは簡単。デフォルト設定のままであれば、Mモード(マニュアルモード)に切り替え、シャッター速度をどんどん延ばしていき、「BULB」か「TIME」に設定すればライブビューブースト2が有効な状態になる。
※LIVE BULB や LIVE TIMEでも可。
なお、LIVE COMPはデフォルトではライブビューブースト2は有効になっていない。個人的には、デフォルト設定で使うことをお勧めする。

ライブビューブースト2を効かせた状態だと、星雲・星団の存在もわかる。

  • ライブビューブースト2を効かせた状態

中央少し下にあるぼんやりしたものが、アンドロメダ大星雲だ。

  • ライブビューブーストをOFFにした状態

左上の明るい星の存在がかすかにわかるぐらいだ。

天の川に浮かび上がる人影を狙ったショット。以前は星空と地上の境目が分からないため構図を決めること自体が困難だった。もし、構図を決められても、最低数回の試し撮りが必要になり、素早く撮ることはできない。今は、ライブビューブースト2と明るいレンズのおかげで、楽々と構図を決めることができる。

グランドティトン国立公園で星空を撮影。光害が無いため日本より空が暗い。そのため構図合わせに苦労しそうだが、ライブビューブースト2のおかげで稜線がくっきり見えた。日本だと、光害の影響で綺麗に写りにくい夏の大三角あたりの天の川がはっきり描写されている。

このように月明かりが残る中であれば、よりはっきりと被写体を確認して構図を決めることができる。ライブビューブースト2を装備したOM-D E-M5 Mark IIは、OM-D E-M1 Mark IIよりも軽くて小さいというメリットがあり、サブ機として活躍できる。

  • 絞り値:F2.0
  • シャッター速度:20秒
  • 焦点距離:31mm
  • ISO感度:3200
  • ソフトフィルター使用・赤道儀(星景モード)
  • OM-D E-M5 Mark II
  • ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD

SHGズームレンズのF2.0通しというメリットを生かした1枚。OLYMPUS Image Share(OI.Share)を使えば、スマートフォンの画面でカメラの操作・構図確認ができるので、星空を絡めた自撮りには最適だ。