Vol.10 森の中の闇へと
2010年03月12日 11:00
モンテベルデの森の中に滝があるというので細い林道を降りて行きました。
昼間でも木々が密集していて足元は暗く、まだ昨日の雨でぬかるんでいました。
わずかな光が届く地上付近でも微生物や動植物の命で溢れています。
森の闇の中に入るとなんとなく怖さを感じます。そして、闇の奥に存在する何かを感じます。
闇は人が忘れている感覚を呼び起こしてくれます。闇の中でも見えなかったものが見えてくるようになります。意識下で闇があるから光を感じるのでしょう。
カメラという暗箱の中に一筋の光が入り、そこに映る像を定着させることが写真の原点です。この大きな森という暗箱の中に光を通して森の生命を見ているのかもしれません。まるで自分が植物になったかのように僅かな光でも敏感に感じます。
滝へと続く道の途中に大きな木が倒れていました。日が当たらないので肉眼では見えにくいのですが、その木の底を覗き込むと白い糸の様なものがたくさん垂れていました。
これは、キノコバエという昆虫の幼虫が作る罠で、そこには小さな蚊のような虫が引っかかっていました。キノコバエの幼虫は糸を引き上げ引っかかった獲物を食べます。自分が吐いた糸も、タンパク源として摂り込み、再利用するといいます。
光が届かない世界。そこにも命は宿っています。暗闇の世界にも広がりを感じます。
しばらく歩いて行くと木立の間からもれてくる光の向こうから水が落ちる音が聞こえてきました。