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野鳥撮影をはじめよう
~その4 カメラの基本設定(AF/露出モード)~

菅原 貴徳

撮影・解説 : 菅原 貴徳

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2022年12月公開

カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

設定をマスターして次のステップへ

今回は野鳥撮影におけるカメラ設定の考え方について説明します。
※以降の説明ではOM-1やE-M1Xのカメラを例に記載します。

野鳥の種類が多様なだけに、万能の設定はありません。フィールドでは、鳥の種類や動き、距離、背景の色具合などから、最適なAF、露出、ドライブ設定を導くことになります。それらの組み合わせを、パターン化して覚えておき、状況に応じて応用できると良いでしょう。パターン化しておくことで、反射的に設定を整えることができますし、よく使うパターンは、例えば、カメラのモードダイヤルにあるカスタムモード(例:OM-1では「C1~C4」表記)に、C1には「止まっている鳥の設定」、C2には「プロキャプチャー」というように、自分でカスタマイズした設定を登録しておくこともできます。

本記事では、「パターン化」の練習として、作例の設定情報に目を向ける前に、同じ状況で、自分だったらどのような設定をするかイメージした上で、答え合わせのように見ていただくのも良いかと思います。

AF設定のキホン

AFの設定で重要なのは、主に「AF方式」と「AFターゲットモード」の使い分けです。

まず「AF方式」の設定について。
「S-AF」は、主に動きのない被写体を撮影するときに使用します。シャッターを半押しにし、一度ピントが合うと、再びシャッターを半押しにするまで、フォーカスは駆動しません。静止している鳥を撮影するときに、後述する「スモールターゲット」と併用すると便利です。

一方の「C-AF」や「C-AF+TR」は、鳥が走る・飛ぶ・泳ぐなど、動き続けているシーンを撮影するときに使用します。後述する「グループターゲット」や「オールターゲット」、「AI被写体認識AF」との併用※1が便利です。

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したホオジロの写真

ホオジロ

秋の草原で、声を頼りに見つけました。このように込み入った状況では、カメラも鳥と草木を見分けるのに苦労します。「スモールターゲット」を使用し、鳥の顔をめがけてフォーカスします。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
1000mm相当*
Aモード F5.6 1/1250秒 ISO 500 -0.3EV

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したコガモの写真

コガモ

水面を泳ぐカモ類は「C-AF」で撮影します。「オールターゲット」では手前の水面にフォーカスされやすいので、「3×3」程度の「グループターゲット」がよいでしょう。このように撮影距離が近いと被写界深度も浅くなりますが、「AI被写体認識AF」を使用※1すると、顔にフォーカスしやすくなります。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*
Aモード F4.5 1/1250秒 ISO 320 -1.0EV

「AFターゲットモード」では、カメラがAFを行う際にピント合わせを行うマスの広さの設定と言い換えられます。「スモールターゲット」のように狭めるほど、撮影者の意図が反映されやすく、草木のような障害物などの影響を受けにくくなります。鳥が静止しているときに使うと便利です。

一方、「グループターゲット」や「オールターゲット」のように、広めのマスを使用すると、「C-AF」との組み合わせではその枠に被写体が収まっている限り、被写体にフォーカスし続けてくれます。動きがあり、スモールターゲットでは追い続けるのが難しいシーンで使用すると便利です。背景が空のように単調であれば、「オールターゲット」が有効ですが、画面に占める鳥のサイズが小さい場合や、背景が鳥と同系色の場合は、「5×5」や「3×3」などのより狭い「グループターゲット」を選択し、カメラがAFの対象を迷わないようにします。ただし、ターゲット枠を狭くするほど、マスに鳥を捉え続けられるのは難しくなるので、撮影者の技量が必要になっていきます。

OM-D E-M1Xや、OM-1に搭載の「AI被写体認識AF(鳥)」は、狭める、という動作を自動で行ってくれるもの、と考えると良いでしょう。撮影者は「グループターゲット」や「オールターゲット」の枠内に鳥を納めることに集中すればよく、あとはカメラが画面の中から鳥を自動で検出し、鳥の顔や目にエリアを絞ってくれるというイメージです。仕組みを理解した上で活用すると、撮影可能なシーンが広がることでしょう。

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 ISで撮影したコサギの写真

コサギ

飛翔するコサギを、カメラで追いかけながら撮影しました。このように、「動きを追う」シーンでは「グループターゲット」と「C-AF」または「C-AF+TR」を使用します。「AI被写体認識AF(鳥)」を使用※1すると、「顔」または「瞳」へとAFエリアが自動で絞り込まれ、フォーカスします。水辺では露出モードは「Mモード」が便利です。

M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
800mm相当*
Mモード F7.1 1/3200秒 ISO 400 ±0.0EV

※1 AI被写体認識AFとの併用時、E-M1Xは「C-AF+TR」、OM-1は「C-AF」に設定

露出モードの選び方

続いて欠かせないのが、露出モードの決め方です。写真は、シャッタースピード、絞りF値、ISO感度の組み合わせで、写り方が変化します。野鳥撮影においては、いかに被写体ぶれ・手ぶれを防ぐのに必要なシャッタースピードを確保するかが問題になるので、基本的には絞りF値は「開放」を使用します。OM SYSTEMは手ぶれ補正機能が優れていますから、主に「被写体ぶれ」に注意して、必要なシャッタースピードを確保します。

筆者が最もよく使用するのが「Aモード(絞り優先モード)」で、鳥を探して歩く時は、常にこのモードにしています。鳥が日向、日陰のどちらに出現しても、露出を整えやすくなります。絞りF値は開放に固定することで、その環境の明るさに対して、もっとも速いシャッタースピードを確保できます。画面に鳥を捉えたら、露出補正をして明るさを整え、撮影しますが、シャッタースピードが十分でないと感じたら、ISO感度を調整します。「ISOオート」に設定し、「ISOオート低速限界※2」を活用する方法もあります。

※2 静止画撮影時に、ISO感度をオートにしたときのISO感度が上がり始めるシャッター速度を設定できます。(撮影モードP/Aで有効)

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したルリビタキの写真

ルリビタキ

森を歩いているとき、特徴的な声で気づくことができました。薄暗い曇りの日の林内でしたが、絞りF値を「開放」にすることで、十分なシャッタースピードを確保できました。AF方式は「AI被写体認識AF(鳥)」または「スモールターゲット」で正確に目にピントを合わせると良いでしょう。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*
Aモード F4.5 1/500秒 ISO 250 -0.3EV

次によく使用するのが「Mモード(マニュアル露出)」。水辺のように開けた環境では、鳥に当たる光の強さが撮影中に大きく変化するわけではないので、事前に露出を固定しておくと、鳥が動いて背景が変わっても露出補正をする必要がなく、便利です。

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したハマシギの写真

ハマシギ

1分のうちに撮影した2枚。波打ち際をちょこまかと動き回るハマシギは、「C-AF」と「グループターゲット」で追いかけます。これくらいの大きさに写る距離感であればグループターゲットは「3×3」が適切です。「Aモード」や「Sモード」だと、背景の明るさ・色味の変化に合わせて都度、露出補正をする必要がありますが、「Mモード」を使用すると、背景の変化に左右されず、鳥を適切な明るさで撮影し続けられます。

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*
Mモード F4.5 1/2500秒 ISO 400 ±0.0EV

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PROで撮影したハマシギの写真

ハマシギ

M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400mm F4.5 TC1.25x IS PRO
800mm相当*
Mモード F4.5 1/2500秒 ISO 400 ±0.0EV

「Sモード(シャッター速度優先)」は、「プロキャプチャーモード」機能と併用する時に使用します。OM SYSTEMの「プロキャプチャーモード」機能は、時間を遡れる機能です。小鳥が飛び立つ瞬間のような、通常では反応が難しいようなシーンを捉えるのに有用です。「1/3200」より速いシャッター速度を設定し、「ISOオート」と併用すると便利です。カワセミやモズ、ジョウビタキなど、枝先によく止まる鳥と相性が良いでしょう。

写真家菅原貴徳がM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROで撮影したモズの写真

モズ

草木の天辺に止まることの多いモズは、「プロキャプチャーモード」機能と相性の良い鳥です。動きを止めることを最重要に考え、シャッタースピードを高速に設定し、ISO感度の設定はカメラに任せました。

M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PROMC-14
840mm相当*
Sモード F5.6 1/3200秒 ISO 2500 -0.3EV

おわりに

カメラ設定は、最初は煩わしく感じますが、基本を押さえれば、機種が変わっても共通するものです。せっかく鳥に出会えたのに、チャンスを逃したり、それによって鳥をじっくりと観察する余裕をなくしてしまうのはもったいないことです。フィールドで慌てず、スマートに意図した設定を導けるよう、機能・設定の理解を深めておきましょう。
最新機種の機能は、マスターすればかなりの割合で野鳥撮影の効率を高めてくれます。しかしそれは、野鳥撮影のほんの入り口にしか過ぎません。本質的に最も大事な、「鳥のことをよく知ること」により比重を割くためにも、理解を欠かさないようにしましょう。

※35mm判換算焦点距離

写真家 菅原 貴徳

写真家 菅原 貴徳(すがわら たかのり)

1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持ち、11歳で野鳥観察をはじめる。東京海洋大学、ノルウェー留学で海洋学を、名古屋大学大学院で海鳥の生態を学んだ後、写真家に。様々な景色に調和した鳥たちの暮らしを追って、国内外を旅する。近著に写真集『木々と見る夢』 (青菁社)、『散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100』(山と渓谷社、写真担当)、『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。日本自然科学写真協会(SSP)会員。

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カメラアイコン記事内で使用した
レンズをご紹介

野鳥撮影のマナー

野鳥撮影時の注意点

  1. 撮影のために餌付けなどの環境の改変をしたり、録音した野鳥の声を流して誘引することはやめましょう。
    野鳥たちの自然な行動や生活を妨げてしまいます。
  2. 営巣中の野鳥たちはとても敏感です。
    大勢で巣を囲むことや、巣やひな、巣立ち直後の幼鳥などの写真の撮影・公開は控えましょう。
  3. 撮影地周辺の住民や、他の公園利用者への気遣いも忘れないようにしましょう。
  4. 撮影地の情報の取り扱いは慎重に行いましょう。特に巣やねぐらのように、逃げ場がない状況では注意が必要です。
    (画像に付加されたGPS情報は、OM Workspace で現像時に削除することが可能です。)
  5. 野鳥たちは自然の中で暮らす生き物です。彼らの生活を邪魔しないよう、ゆとりをもって撮影しましょう。
    また、双眼鏡などを使ってよく観察することが、よりよい撮影に繋がります。
  6. 野鳥撮影でフラッシュを使用すると、野鳥たちを驚かせてしまいます。
    暗い場所では、フラッシュ使用を避けて、ISO感度を上げて撮影しましょう。

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