中野耕志OM-Dと旅する世界の野鳥

OM-Dシステムの機動力を生かして、写真家・中野耕志が世界を旅しながら野鳥撮影を楽しむ本企画「OM-Dと旅する世界の野鳥」。
計4回にわたって作品を紹介してまいります。中野耕志が撮る世界の野鳥をお楽しみください。

第三回 オーストラリア

オーストラリアは、陸地のみならず洋上での探鳥も魅力的だ。オーストラリアやニュージーランド周辺の島々では数多のミズナギドリ類が繁殖しているし、南極大陸にほど近い亜南極の島々ではアホウドリ類が繁殖しているため、これらの鳥たちがオーストラリア沖の洋上で観察できるのである。オーストラリア南東部ではいくつかの海鳥ウォッチングツアーがあり、ボートに乗り込んでこれらの海鳥を観察することもできる。今回のオーストラリア滞在中、一度だけこの船に乗るチャンスがあった。乗船当日は快晴ではあるものの風が強く波が高かった。しかしある程度海が荒れている方が鳥の出が良いもので、港を出港して30分もすると船の周りにはオナガミズナギドリ、オーストラリアシロカツオドリ、オオアジサシなどが現れた。

船のデッキ上は容赦なく波飛沫が降り注いでなにもかもがびしょ濡れ。もちろん撮影しないときはレインカバーで機材を保護するが、撮影中はある程度波がかかってしまうので、撮影終了後にすぐに濡れたタオルで拭き取った。こんなときはE-M1Xの防塵防滴性能が頼もしい。

はるか遠くに見える大きな白いシルエットはアホウドリ類だ。小さな点はみるみるうちに大きくなり、マユグロアホウドリであることが分かった。水平線を見ると波が高いのが見て取れる。当然ながら船は大きく揺れるが、カメラとレンズがコンパクトであるため動揺する船からの手持ち撮影でも安定したフレーミングが可能。

こちらはニュージーランドアホウドリ。黄色と黒の嘴がおしゃれなアホウドリだ。海上に浮いていたり飛んでいる鳥を撮る場合は、鳥の前後の波にピントを引っ張られないようなAF設定が重要だ。測距点選択を広くすると周囲の波にAFが合ってしまう可能性が高く、かといって測距点が1点だと測距点を鳥に合わせ続けるのが難しいのだ。そこで測距点をグループ化したグループターゲットを多用するが、3x3のカスタムターゲットを使用し、ボディー背面のジョイスティック(マルチセレクター)でピントを合わせたい部分に測距点を移動させている。

ウォッチングボートから下船し、海岸を見渡すと何種類かの水辺の鳥を見つけた。そのうちオーストラリアクロミヤコドリは撮影したことがないので順光側から少しずつ接近して撮影した。野鳥に接近するときのコツは、焦らず十分な時間をかけることである。また姿勢を低くしたり岩や木に隠れたりして自身のシルエットを極力小さくしつつ、相手と目を合わせないなど撮影対象に興味が無いそぶりをする。また相手が緊張しているときにいきなりカメラを向けると逃げてしまう可能性が上がるので、十分緊張をほぐしたのを確認し、他に意識が向いたタイミングを見計らってゆっくりとカメラを向ける。ここでも相手の顔色をうかがうなど、観察力が問われるのだ。

岩礁をかすめるように飛翔するオーストラリアクロミヤコドリ。全身暗色かつ背景も暗いのでオートフォーカスには厳しい条件だが、E-M1 Mark IIIのC-AFは確実にピントを合わせてくれた。

今回は前半にピンクロビン、後半にアホウドリ類というターゲットを絞っての撮影だったが、前半では機動力に優れたE-M1 Mark III、後半では耐候性に優れたE-M1Xのそれぞれのメリットが明確になった。お互いの基本性能が同じであることは作品のクオリティーを統一できることを意味し、うまく使い分けられると実感した。