中野耕志OM-Dと旅する世界の野鳥

OM-Dシステムの機動力を生かして、写真家・中野耕志が世界を旅しながら野鳥撮影を楽しむ本企画「OM-Dと旅する世界の野鳥」。
計4回にわたって作品を紹介してまいります。中野耕志が撮る世界の野鳥をお楽しみください。

第四回 アメリカ

オリンパスOM-Dとともに、写真家・中野耕志が世界を旅しながら野鳥撮影を楽しむ本企画「OM-Dと旅する世界の野鳥」。第四回はアメリカ・ニューメキシコ州で越冬するハクガンとカナダヅルを中心にお届けする。

アメリカ合衆国は広大な国土を持つこともあり野生動物が野生のままに暮らせる環境が残されている。また国民の野生生物への意識の高さの現れとして国立公園や野生生物保護区も多く、誰もが自然に親しみながら学べるようなシステムが充実しており、野鳥写真家にとっても居心地がよい国である。
今回訪れたリオグランデ川沿いは氾濫原だったところで古くから農耕が行われ、冬期には農耕地で採餌するハクガンやカナダヅルなどの大型鳥類が大挙して訪れる。これらの鳥たちは夏の間はカナダやアラスカなどの北方で繁殖し、秋から春にかけてこの地で越冬するために渡来する渡り鳥だ。

ハクガンやカナダヅルは、越冬中は外敵から身を守れる湖などで塒(ねぐら)を取り、夜が明けると採餌のために農耕地へと向かう。そして夕方になると塒へと戻るという生活を繰り返している。そのため動きのあるシーンを撮影するためには日の出前後と日没前後が狙い目だ。早朝と夕方は野鳥の動きが活発であると同時に光線状態がフォトジェニックなので、この時間帯を逃さないことは野鳥撮影の基本中の基本である。具体的には朝は日の出前30分から日の出後2時間、夕方は日没前2時間から日没後30分におもな撮影を計画し、その他の時間はロケハンや移動、休憩等に充てるのが効率的なのである。

ハクガンの全長は約80cmと大きい。全身純白の羽毛を持つが、翼を広げると翼の先端は黒いのと、嘴(くちばし)と足はピンク色なのが見て取れる。

今回の取材で持ち込んだ機材は、カメラがE-M1XとE-M1 Mark IIの2台、レンズが7-14 mmF2.8 PRO、12-40mm F2.8 PRO、40-150mm F2.8 PRO、300mm F4.0 PRO、MC-14の5本。これでフルサイズ換算14mmから840mm相当まで、あらゆる撮影シーンをカバーできる。フルセットでもシステム重量は5kg未満と非常にコンパクトにまとめられるので、移動の多い海外取材で重宝するのである。なお本取材は1年ほど前に行っているため、現在ではE-M1 Mark IIをE-M1 Mark IIIに更新し、MC-20を追加している。

海外での探鳥は見知らぬ鳥との出会いも多いので、撮影に入る前に入念に鳥を観察して、識別はもちろん行動を把握したい。OM-Dシステムなら撮影機材を軽量化できるので、ちゃんとした図鑑や双眼鏡、望遠鏡などの観察用具を充実させられるのがありがたい。
ひとくちに野鳥撮影といっても、実際の作業割合は観察6割、勉強2割、撮影2割くらいではなかろうか。己の観察力を磨くことで「気づき」が増えるので、オリジナリティあふれる作品づくりに生かせる。

ハクガンの仲間は2種類いて、大多数がこの写真の奥に写っているハクガン(Snow Goose)だが、写真手前のヒメハクガン(Ross's Goose)もハクガンの群れに混ざっている。両種の外観上の識別点は、体の大きさの違いと嘴(くちばし)の形状の違いで、体が大きくて上嘴と下嘴の合わせ目が黒いのがハクガン、体が小さくて嘴の根元がガサガサしているのがヒメハクガンだ。

ハクガンには大多数の白色型のほかに、”アオハクガン”と呼ばれる暗色型がいる。大きな群れには一定の割合で混ざっており、羽の色は異なるがこれも同じハクガンなのである。

賑やかに鳴き交わしていたハクガンたちの声が一瞬止んだ刹那、ゴーッという羽音とともに数千羽ものハクガンが一斉に飛び立つ。野生のエネルギーが爆発する瞬間だ。
ハクガンの英名はSnow Goose(複数形ではSnow Geese)といい、群翔する姿はまさに雪が舞うかのよう。

日の出時刻を目指して撮影ポイントへ移動中、湖に立つ枯木にハクトウワシを見つけた。次から次へと現れる被写体をすべて丁寧に撮影していると日の出に間に合わないが、優れた手ぶれ補正能力を持つOM-Dなら、三脚を立てる必要がなく手持ち撮影できるので、短時間で次の撮影に移れるため慌ただしい時間帯でも撮影効率が良い。