中野耕志OM-Dと旅する世界の野鳥

OM-Dシステムの機動力を生かして、写真家・中野耕志が世界を旅しながら野鳥撮影を楽しむ本企画「OM-Dと旅する世界の野鳥」。
計4回にわたって作品を紹介してまいります。中野耕志が撮る世界の野鳥をお楽しみください。

第四回 アメリカ

ニューメキシコ州でハクガンとカナダヅルを撮影した後は、空路でカリフォルニア州へ移動し、別の探鳥地を巡った。ロサンゼルスの南に位置するオレンジカウンティにはいくつもの野生生物保護区があるが、付近は住宅地が接近している場所が多いため、近隣の住民が散歩ついでに気軽に自然観察できるようになっている。ゆえに鳥たちも比較的人慣れしており、人と鳥との距離が近いお気に入りの撮影地だ。

小型のカモ類で、頭部の緑/紫と白の塗り分けが美しいヒメハジロ。
日本では珍しいヒメハジロも北米では普通種なので、撮影チャンスが多いのがうれしい。ところ変われば珍しい種類も変わるもので、日本では珍しい鳥といえども世界的な普通種であったり、逆に日本では見向きもされないほどの普通種がじつは世界的な希少種であったりと、海外探鳥を経験するとその鳥に対する自分の中での見方が変わるのもまた興味深いものである。
そして世界を股にかけて渡る鳥のためには、繁殖地、越冬地、中継地のそれぞれの環境を保全する必要があることを肌で感じられるようになるのは大きな収穫だ。

オレンジ色の嘴(くちばし)が美しいカッショクペリカン。はじめは横位置で撮影していたが、岸の近くまで泳いできたのでカメラを縦位置に構え直して撮影。E-M1Xは横位置と縦位置のホールディングや操作性がほぼ同じなので、縦横どちらでも快適に撮影できる。

遊歩道の近くに止まっていたアンナハチドリ。全長約10cmと小さく、ホバリングしながら吸蜜する姿は小鳥というよりスズメガのような印象だ。ハチドリ類のオスの顔面の羽毛は構造色となっており、光の当たる角度により色が変化する。

横向きでは黒に近い紫に見えていた顔の羽毛が、正面を向くとこのとおりメタリックレッドに大変身する。前の写真と見比べても同じ個体とは思えないほどの変貌ぶりだ。

水辺で採餌するオオハシシギ。水面にいる鳥の撮影では、カメラを水面スレスレまで下げて「トリ目線」で撮影するとグッと魅力的になる。水面との俯角が浅くなると前景と背景のボケ量が大きくなり画面が簡素化され、主役が浮き出て見えるのだ。
撮影者にとってはつらい体勢になるが、気軽に手持ちで超望遠撮影できるのは軽量コンパクトなOM-Dならではだ。

飛び立つオオキアシシギを、E-M1Xのプロキャプチャーモードを使い撮影した。プロキャプチャーはシャッターボタンを全押ししてから遡って記録できる便利な機能で、野鳥が飛び立つシーンをいとも簡単に撮影できる。

オオキアシシギが飛びそうなそぶりを見せたので、プロキャプチャーモードに設定して半押ししながらそのときを待った。ファインダーで飛び立ったのを確認して、全押しした時点から最大35コマ遡って記録されるので、静止状態から翼を広げて飛び立つまでの一連の動作がしっかりと記録されている。人間の反応速度による遅延やカメラのタイムラグにより逃していたシャッターチャンスをも記録できるという、ミラーレスカメラならではの画期的な機能だ。

カスタムモード設定した内容をカメラ背面に貼り付け、所望のモードに素早く切り替えられるようにしている。C1はおもにとまっている野鳥を撮る場合、C2は飛んでいる野鳥を撮る場合、C3はプロキャプチャーモードで撮る場合に適した設定になるよう、カスタム設定を登録している。鳥が飛び立つそぶりを見せたらモードダイヤルを素早くC3に設定し、すぐプロキャプチャーモードで撮影できるようにすればシャッターチャンスを逃さない。

夕焼けに染まる水面をバックに飛翔するオオキアシシギのシルエット。一日を締めくくる印象的な一枚に仕上がった。

写真展案内

第一回をマレーシア、第二回をケニア、第三回をオーストラリア、そして第四回をアメリカ。写真家・中野耕志がOM-Dとともに旅をしながら世界の野鳥を撮り歩く本企画、いかがだったでしょうか。本連載のほかにも、OM-Dとともにアイスランドやコスタリカなどにも訪れました。これにより北アメリカ、中央アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、東南アジア、そしてオーストラリアの、世界の主要な大陸をOM-Dとともに撮り歩いたことになります。
鳥たちが暮らす自然環境は、美しくも、ときに厳しいものでした。そんな厳しい自然環境下での撮影において、オリンパスOM-Dシステムは故障することなく鳥たちの美しい姿を記録することができました。

世界の野鳥撮影の一区切りとして、このたび写真展を開催することになりました。
写真展のタイトルは本連載と同じ「OM-Dと旅する世界の野鳥」です。本連載に掲載した鳥たちはもちろん、アイスランドで撮影したパフィンやコスタリカで撮影したケツァールなど、魅力的な世界の野鳥たちを大判パネルで展示いたしますので、皆様のお越しをお待ち申し上げます。

オリンパスギャラリー東京

  • 2020年7月31日(金)~8月5日(水)/8月17日(月)~8月26日(水)
  • ※10:00~18:00/8月6日(木)~8月16日(日)夏季休館、8月20日(木)休館

オリンパスギャラリー大阪

  • 2020年9月4日(金)~9月16日(水)
  • ※10:00~18:00/9月10日(木)休館
> 写真展詳細はこちら