8848メートルの山頂で“この1枚”を撮ったときのお気持ちは？

まず父が80歳という高齢で8848mの世界一の山にチャレンジし、登頂に成功したのですから、大変な喜びですが、同時に頂上に立ったという証を確実に残さねば、という使命感もありました。登山は普通のスポーツのように誰かが判定し、記録するのではない自己申告の世界。認めてもらうには登頂したという確固たる証を自ら残さねばならず、今回のように顔の写った写真こそが証になるのです。しかし酸素濃度は平地の約1/3、マスクを外して写真を撮れる時間は体への負荷を考えるとわずかしかありません。シャッターを切った後、TG-2の背面液晶で“この1枚”（※1）が撮れているのを確認したときはほっとしました。
（※1 下記に掲載した、8848ｍの山頂で三浦雄一郎氏が手を振り上げた瞬間の写真。）

登頂の瞬間を撮ったTG-2、どんなカメラに感じました？

高山という非常に厳しい環境の中、確実に動いてくれた信頼性に満足しています。特に低温に対する高い耐性は、試しに出してみたスマホが寒さでたちまち動作しなくなったのとは対照的。頂上ではマイナス25℃以下にもなる過酷な環境ですが、バッテリーの持ちも十分満足でき、今回8日間の登頂行程で合計3本しか消費していません。（※2）もちろんタフなこと、壊れず信頼性が高いことは何より大切。行程中はハードな氷壁のアタックなどもあるうえ、カメラといえど最低限の注意しか払えません。ですが、こすって傷こそ付いていますが、動かなくなるようなトラブルはありませんでした。
（※2 今回は節電のためGPS機能はオフの状態で登頂されました）

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  山頂でのツーショットでマスクを外した豪太さんと雄一郎氏。ゴーグルで見えないが、雄一郎氏は笑っているとのこと

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  登頂アタック当日の夜明け。神々しい風景だが酸素濃度は平地の約1/3、気温はマイナス25℃以下のデスゾーン

今回の登頂、豪太さんの役割はどういったものでした？

登山隊“チームMIURA”は隊長が父の雄一郎、私は副隊長のポジションです。そういった隊の中の役割とともに、父のもっとも近くであらゆるサポートをしたうえで記録の写真も撮っています。倉岡さん、五十嵐さん、そして平出さんといった山岳写真に長けたメンバーが同行し、すばらしい記録を残してくださいましたが、私は岸壁を登っている間も父のすぐ後にいて、一挙一動を見られるポジションに必ずいました。そうだ、そのポジションで“TG-2ならではの強み”で撮った写真がありますよ。

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  アタック前のテント内での“お茶会”。こうしたゆとりの時間を持つことが、後の厳しい登頂に挑む力を与えてくれる

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  TV番組用に作られたエベレストの登攀ルートの模型。これだけを見ても、とてつもない難関ルートであることがわかる（三浦事務所内の展示物を撮影）

“TG-2ならではの強み”とはなんでしょうか？

“TG-2の強み”とは片手で操作、撮影が行えることです。ザイルを使って斜面を登ってゆく父の後姿はすばらしく迫力があるし、ぜひ写真に残したかった。私は防寒ジャケットの胸ポケットにTG-2を入れて登っていましたが、取り出してから電源のオン、シャッターを切るまで片手でできるのです。だからこそ登攀中でも撮れた写真があったのです。しかも立ち上がりが早く、撮りたいと感じたそのときに対応してくれました。

夜間の印象的な写真も撮ってらっしゃいますね

下山の時には父の体調のこともあり、可能な限り迅速に比較的安全なC2地点（キャンプ2、6500級）まで下山したかったため、安全に注意したうえで夜間にも移動しました。この写真ではフラッシュは使っていませんが、レンズが明るいためその場の光で撮れています。きっとフラッシュを使ったら手前のザック周辺だけ明るく、奥は真っ暗の写真になるのでしょうね。この写真であれば山岳行の臨場感というか、その時の息遣いも感じられると思います。

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  豪太氏が手に持っているのが実際に8848mのエベレスト山頂で活躍したTG-2。シリコンジャケットを装備しているのは低温対策と滑り止めのため

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  氷壁を降りきり、ほっとしての雪中ビバーク。フラッシュなしでの撮影のため、夜間行の雰囲気が引き立つ

今回撮られた登頂の写真はどう活用されるのですか？

今回の登頂達成は応援をいただいた多くの方々のお力を借りての成功と考えています。三浦雄一郎が“チームMIURA”が何を成し得たか、私がTG-2で撮影したものも含めた数々の写真がその証であり、これからもこのトライアルの意義を語って後世に残していくことでしょう。それだけ写真の持つ記録の力は大きいということなのです。

今回のフォトグラファー