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ソロクライマー 山野井泰史×森一幸 スペシャル対談

  • ソロクライマー 山野井泰史 × STYLUS Toughシリーズ開発責任者 森一幸
  • ソロクライマー 山野井泰史
    1965年、東京都出身。中学時代からクライミングに没頭。単独無酸素で高峰に挑むアルパインスタイル登山の第一人者。2002年、妻の妙子とともにヒマラヤのギャチュンカン北壁を登攀後、雪崩に遭って重度の凍傷を負い、手足の指10本を切断するもクライミングへの情熱は冷めず、今も新たな挑戦を続けている。
  • ソロクライマー 山野井泰史 × STYLUS Toughシリーズ開発責任者 森一幸
  • STYLUS Toughシリーズ 開発責任者 森一幸
    1971年、神奈川県出身。学生時代からダイビングを始め、「世界の海で潜れるデジカメをつくりたい」という夢を持って、1996年にオリンパス入社。Toughプロジェクトのリーダーとして、現在も新たなカメラの可能性を求め奮闘中である。

大自然を愛する男のこだわりが、Toughを生んだ。

山を愛し、過酷な大岩壁に挑む世界屈指のソロクライマー、山野井泰史。
海に憧れ、どんな環境でも使えるカメラを夢見た開発者、森一幸。
ともにタフの頂点を目指す二人の男が、道具へのこだわり、
理想のカメラについて語り合った。

――極限の状況下でも、カメラは必ず持って行く。

●山野井さんは、すでにToughを使われているんですよね。実際に使ってみていかがですか?

山野井:ええ、もう3年くらいになるかな。山に登る時以外でも、ちょっと散歩に行って動物を撮ったりね。確か使い出した翌日に道の上で落としちゃったんです。それでも大丈夫でした。

森:山ではやはり、落としたりぶつけたりすることも多いですか?

山野井:チムニーと言って、岩の狭い隙間を登っていくことがあるんですよ。そういう時はけっこうガリガリさせますね。ぶつかるというか、岩と擦れていくみたいな。でも、そんなに傷ついてないですよね。

森:それでも、所々にハードな使い方を感じますね。逆にちょっとうれしくなってしまいます。そんな風にガンガン使い込んで欲しいカメラなんです。山野井さんのように、8,000m級の山に登る人って、やはり必ずカメラは持って行くものですか?

山野井:僕も昔は、写真にはこだわってなかったけど、ヒマラヤに行くようになった頃からは持って行ってますね。頂上アタックの時なんかは、荷物を必要最小限まで減らして、どんどん軽量化していくわけじゃないですか。でもカメラだけはみんな持って行きますね。僕なんか、特に発表したいわけでもないのに、極限の状況でもなぜか持って行くんですよ。

――山とフィットできる、タフでシンプルな道具。

森:そういう時って、やはりカメラもできる限り軽い方がいいんでしょうか?

山野井:昔は、衣類に付いてるタグまではずしてたこともあるんですよ。少しでも余計なものがあるとシンプルじゃない。山とフィットできない。だから僕の場合はカメラも、小さくて軽い方が登っていて気持ちいいですね。

●できるだけ素の自分のままで、山と接したいということですね。

山野井:できれば、裸で登れれば一番いいんでしょうけどね。写真は撮りたいんだけど、カメラを持っているのは感じたくないんです。カメラだけじゃなく山の道具にしても、持ってるんだけどそれを感じない方がいい。

森:ラフに扱っても壊れないというのも、それに通じますよね。カメラを持っていることを意識しなくていい。

山野井:そうそう。以前はザックの中にどういう風に仕舞えばいいんだろうって、気になってたじゃないですか。

森:100kgまで荷重がかかっても壊れにくいようにしています。バイクや自転車に乗る人がズボンのポケットに入れることも想定しているので、人間の体重ぐらいでは壊れにくくできています。多少手荒に扱っても大丈夫ですよ。

山野井:だからかな。いろんな山でこのカメラ、よく見かけるんですよ。フィルムの頃もToughを使ってたんですが、山ではやっぱり使ってる人、多かったですね。

森:その頃から、Toughは生活防水だったからですね。オリンパスは早くからタフさにはこだわってきましたから。

――写真を撮る行為も、生き残るための手段。

山野井:どんなに厳しい状況でも、写真を撮るのって大切な行為なんですよ。僕なんか、まわりの景色も見ないで、目の前の岩と氷だけ見て登り続けたりするわけです。それを何十時間も続けてると、危険を感じなくなってしまうんですね。だから、途中で一瞬立ち止まって写真でも撮る、視野を広げて気を抜くっていうのは、生き残る手段としてもとても重要なんです。

森:すごいなあ。そんな意味もあるんですね。他にも、山ではどんな風に使われているんですか?

山野井:大岩壁を登る時とかは、ベースキャンプで事前にその全体と部分を何枚も撮っておくんです。登り出して、自分のいる位置がわからなくなった時に、写真で確認して頂上までの距離を見たり、拡大して岩の割れ目を調べたりしてますね。昔は自分でスケッチして、それを持って登ってたんですよ。

森:なるほど、デジタルならではですね。そんな使い方は初めて聞きました。

●その他にも、山のカメラとしてこだわりたいことって何かありますか?

山野井:そうですね。あと、山では片手でも簡単に撮れるといい。できるだけシンプルな操作で。岩登りする人たちにとっては、基本的には片手ですべて操作できるのがベスト。しかも高所で酸素が薄くなると、複雑なことを考えられなくなって、普段何気なく使っている機能さえ思い出せなくなってくるんです。だから、撮りたい本能だけで使えるくらいだとうれしいですね。

森:今のタフには、カメラを軽くたたくだけで撮影できるタップコントロール(TOUGH-8010、TOUGH-6020に搭載)が付いていて、これも山を意識した機能のひとつです。本格的な登山じゃなくても、雪山などではグローブをしてますよね。特に極限まで行くと、グローブをはずして小さなボタンを押すなんて考えられない。そんな時のことを考えたんです。登山やスキー、スノボーなどをやってる方には好評ですね。

――人の行ける所なら、どこへでも行けるカメラ。

●アウトドアでの理想のカメラに、どんどん近づいていますね。さらに上を目指すとしたら、どんなカメラなんでしょうか?

森:人が行ける所には、どんな所でもカメラを必ず持って行けるのが理想です。例えば、今のタフは40℃から-10℃で動作を保証していますが、地球上の気温を調べてみると、60℃から-90℃の世界があるんですよ。将来的には、この150℃の範囲まで、平気で持って行けるカメラをつくりたいんです。

山野井:確かに、ヒマラヤとかだと-30℃・40℃ですからね。バッテリーは気になりますね。

森:防水もそうですね。私はずっとダイビングをやっているんですが、時計では200m防水って普通にあるじゃないですか。カメラでもそれを実現したいんです。もっと言えば、宇宙旅行だってできる日が来るでしょうから、そこにこのカメラを持って行ければうれしいですよね。

つまり、自分の体の一部のように使えて、カメラを意識しなくてもどこへでも一緒に行けるカメラ。それは、山野井さんにも満足してもらえそうですね。

山野井:いいなあ。僕の場合、単独で登ることも多いので、どれも同じような写真が多いんですよ。そんな時、カメラが勝手に浮いてくれて、上空から撮れたりするといいんですけどねえ(笑)。

森:今は無理ですけど、何十年か後にはできるかもしれませんよ。

山野井:やりたいことは、次から次にありますね。今から考えると、納得した登山ってひとつもないなあって思うんです。理想のクライミングをひとつもしてないと思うと、まだ終わりにはできないなあって感じるんです。

森:私もまだ、道半ばですからね。Toughでひとつの夢は叶ったんですけど、終わりにはできませんね。まだまだこれからも広げていきたいと思っています。

(2010年5月、奥多摩・山野井泰史の自宅にて。)

※2012年より「OLYMPUS Toughシリーズ」は「STYLUS Toughシリーズ」に変更となりました。