野鳥撮影に革命をもたらす!
手持ちで撮れる600mmレンズフィールドレポート Vol.2
~撮影シーンを選ばない手ぶれ補正の威力~

2.低振動撮影と静音撮影で手ぶれ補正効果を高める

強力な手ぶれ補正効果を持つ「5軸シンクロ手ぶれ補正」のおかげで、撮影者が手持ちで撮影することによって生じる“ぶれ”は抑えられるようになったが、“ぶれ”の原因は他にもある。それは、カメラのフォーカルプレーンシャッターが動作することによって生じる振動だ。

OM-Dシリーズ、PENシリーズのフォーカルプレーンシャッターは、撮像素子の前面を金属幕のスリットが走行することで露光時間をコントロールする。このスリットの走行は、先幕と後幕、2つの金属幕の動きによって生じる。画像に“ぶれ”として影響するのは、先幕が動くときの微細な振動。カメラの画素数が増えるに従って、このわずかな振動が画像のシャープな写りに悪影響を与えると認識されるようになってきた。

そこで、OM-Dシリーズ、PENシリーズに搭載されているのが「低振動撮影」機能。振動の原因となる先幕の動作をなくし、電子シャッターに置き換えたもので、一般には「電子先幕シャッター」と呼ばれる。低速シャッターで撮影する際の効果は絶大で、筆者は基本的に「低振動撮影」で撮影している。

なお、「電子先幕シャッター」にも弱点はある。電子先幕と機械式の後幕というハイブリット構造であることにより、シャッター速度が速くなると露光ムラを生じるのだ。そこで、この現象を防ぐため、「低振動撮影」に設定してあっても、シャッター速度が1/320秒より速くなると、通常のフォーカルプレーンシャッター撮影に切り替わるようになっている。また、「低振動撮影」は「連写H」時には使えず、単写か「連写L」で使うことになる。

OM-D E-M1(最新のファームウェア使用時)、E-M5 MarkII、E-M10 MarkII、PEN-Fには、「低振動撮影」に加え、「無音撮影」というシャッター機能がある。これは、先幕だけでなく、後幕の動作も電子シャッターに置き換えたもの。無音、無振動となり、野鳥撮影にも役立ちそうだ。ただし、電子シャッターによる「無音撮影」は、被写体が動いているシーンは苦手。撮像素子に使われているLive MOSセンサーの特性により、動いている被写体が歪んで写る「ローリングシャッター歪み」が生じてしまうのだ。動かない被写体には「静音撮影」は効果的だが、動きのある被写体を撮る場合には「低振動撮影」を使うのが望ましい。

木陰で涼むバライロシラコバト。せわしなく動きまわるのでISO感度を1250まで上げた。もちろん、ISO感度アップは手ぶれの防止にも役立つ。(バリ島で撮影)

バードパークの温室にいたアカフサゴシキドリ。葉の陰におり、シャッター速度は1/30秒となった。「低振動撮影」で撮ったこともあり、ぶれはなく、非常にシャープ。(バリ島で撮影)

散策の途中、空き地の雑草にとまっていたコシジロキンパラ。これまでであれば600mm相当の超望遠の手持ち撮影ははばかられるが、躊躇せずに撮れるのが「5軸シンクロ手ぶれ補正」のいいところ。「低振動撮影」を使用。(バリ島で撮影)

バリ島のバードパークの一角に、夜行性の鳥たちを展示するエリアがあった。コノハズクの展示ケースはわずかな照明しかなく、ISO3200に設定しても、シャッター速度は1/10秒。手ぶれ補正に加え、「静音撮影」を使うことでぶれのないカットを得ることができた。

わずかなぶれを抑えるためにシャッターを使い分ける

最新のOM-DシリーズとPEN-Fには、シャッターを切る際に生じる振動や音を抑えるために、「低振動撮影」と「静音撮影」の2つの機能が搭載されている。「連写/セルフタイマー」の項目で低振動(低振動連写)、静音(静音連写)を選ぶことで、より効果的に手ぶれを抑えることができる。

最新のOM-D、PEN-Fに搭載される3種類のシャッター

  • 通常のシャッター:
    フォーカルプレーンシャッターによる機械的なシャッター(メカシャッターとも)方式。
  • 低振動撮影:
    1/320秒以下のシャッター速度時に「電子先幕シャッター」を使い、振動を抑える。1/320秒より速いシャッターではメカシャッターとなる。
  • 静音撮影:
    シャッター速度全速で機械的な振動のない電子シャッターを使って撮影する。

低振動/静音シャッターを使う際のメニュー設定

「撮影メニュー2」を選択する。

低振動撮影、静音撮影の項目が「OFF」になっていたら「0秒」にセットし直す。

※動きのある被写体を撮る際には、「静音撮影(電子シャッター)」と高速シャッターを同時に使用することで「ローリングシャッター歪み」と呼ばれる現象が発生するので、静音撮影は上手く使い分けると良い。