萩原 史郎の

名もなき片隅の小景 ~春~

春と言えば桜。私自身、桜を超える春の撮影対象は見いだせていない。これまでも、そしてこれからも…。ただ、そんな桜の陰に隠れて健気に生きる命も当然ある。そこに気づけた昨春。枝垂桜で有名な身延山(山梨県)を訪ねた折、当たり前のように桜三昧の撮影を続けていたが、ふと足元を見るとそこに光り輝く命があった。その命に敬意を表するため、真摯に対話をし丁寧にシャッターを押した。いま思い返しても、この作品を撮ったあの現場の匂いは鮮明で、自分がどう動いたのか記憶も正確だ。
プロの仕事としては、あの時のことを思い返すといささかの反省がある。桜を撮らなかったこと? 否。もっともっとこれらの命を見つめなければいけなかったことを…である。この3点が中途半端とは言わないが、より深い表現が見つかったかもしれないという後悔は、やはり先に立たずである。

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